本研究では、産業動物かつ実験動物として重要なブタを用いて、自然リンパ球(Innate Lymphoid Cell; ILC)の同定法を確立し、その存在様態を明らかにすることを目的とする。 前年度までに、サイトカイン刺激試験に用いる、IL-12、18、23、25、33をCHO細胞またはブレビバチルス菌を用いて作製することに成功した。さらに、血球マーカー陽性/分化マーカー陰性(CD45+CD3-CD8-CD14-CD16-CD21-)かつ特異的転写因子(T-bet、GATA3、RORγt)陽性の細胞として、ILC1~3をFACSにて検出する方法を確立した。 この方法を用いて、野生型ブタの各組織(末梢血、脾臓、腸間膜リンパ節、肺)におけるILCの存在頻度を解析した。その結果、ILC1は末梢血(1.4±0.90%)、ILC2は肺(0.16±0.030%)で比較的多く存在し、ILC3は全ての組織で極めて低頻度(0.03%以下)であった。また、T・B細胞を欠損する免疫不全ブタであるRAG2ノックアウトブタを用いて同様な解析を行ったところ、末梢血を除く各組織でILC1と2の存在頻度が野生型より高いことが示された。 続いて、血球マーカー陽性/分化マーカー陰性細胞を回収することにより、ILCを濃縮し、インターロイキン応答活性の解析を行った。ILC1については、末梢血細胞を用いて、IL2・IL12・IL18添加後の培地中IFNγの上昇を確認することができた。ILC2は、肺由来の細胞を用い、IL2・IL25・IL33を添加後のIL5およびIL13の培地中濃度を測定したが、変化は認められなかった。以上より、ブタにおいてもマウスやヒトと同様の活性を持つILC1の存在は示唆されたが、ILC2については濃縮方法の改良やインターロイキン応答活性が異なる可能性等についてさらなる検討が必要である。
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