体外受精卵の染色体異常の発生時期として、配偶子形成、受精、そして初期発生の三つに大別できる。受精における染色体異常の発生原因の一つが、共焦点レーザー顕微鏡による経時的な染色体の挙動の記録(ライブイメージング)により、雌雄両前核を有する受精卵が2細胞期に移行する第一有糸分裂期において両前核の染色体が一つの有糸分裂紡錘体上に統合(シンガミー)されず、二つの紡錘体が形成され、分裂することによることを明らかにした。 第一有糸分裂における異常分裂割球は形態的には正常であることが多く、細胞分裂が順調に進行するため、光学顕微鏡による観察ではシンガミーが正常に行われた胚と識別できない。染色体の挙動を可視化したライブイメージングにより、1匹の精子が侵入したウシ卵子の14%で父親由来と母親由来の染色体の融合が起こらず、それぞれの単為発生割球から構成される単為発生割球のお集合体が生じることが明らかになった。 核膜崩壊時の両前核間の距離が離れている前核期卵において、父親由来と母親由来の染色体の融合が起こらない現象が観察された。細胞骨格の一つであるアクチンの重合を阻害すると細胞膜近傍に前核が局在する前核期卵が増加した。
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