研究課題
一倍体ES細胞を樹立するために、雌雄どちらか一方のゲノムを持つ一倍体の卵を作出し、体外培養によって胚盤胞に発生させる必要がある。そのためにはまず質の良い成熟卵を準備することが重要となる。そこで、成熟卵の採取方法を検討し、胚盤胞への発生能を持つ良質の成熟卵であることを確認するために、成熟卵への顕微受精による正常受精卵の作出とその体外発生を検討した。顕微受精によって作出された正常受精卵は、採取元となる雌個体による差はあるものの、高率に胚盤胞へ発生することも確認された。質の良い成熟卵が採取できていることを示している。また、一倍体については、精子が寄与しない単純な単為発生誘導によって雌性のみを持つ卵を作出することができる。そこで、まず単為発生誘起(IonomycinおよびDMAP+CB処理)によって雌性ゲノムで構成される二倍体単為発生卵を作成したところ、胚盤胞への発生が確認され、さらにそこからES様細胞の樹立にも成功した。これは二倍体ではあるものの、雌性ゲノムのみによって構成されていることから、一倍体ES細胞の樹立が期待できる結果であった。次に、顕微受精卵の胚盤胞への発生を確認したことから、採取された成熟卵から作出された受精卵の発生能は十分あるものと考えられた。そこで、顕微受精卵の発生初期に形成された雌雄の両前核の内の雄性側を顕微操作で除核して一倍体卵を作出し、体外培養した。その結果、形態的にはきれいではないが、胚盤胞への発生を確認することができた。しかし、正常な受精卵のように大きな胞胚腔を形成した拡張胚盤胞に成長することなく、萎縮し、発生を停止した。ES細胞の樹立には至らなかったものの、前核の形成といった正常な受精能を確認できたものから作出された一倍体卵の胚盤胞への発生が確認できたことは、今後の更なる成果向上につながる結果であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
卵の採取方法の検討および受精卵の発生能による卵の質を確認する観点から、成熟卵への顕微受精による正常受精卵の作出とその発生能の確認を行った。顕微受精によって作出された正常受精卵は、採取元となる雌個体による差はあるものの、高率に胚盤胞へ発生することも確認できた。質の良い成熟卵が採取できていることを示している。また、一倍体については、精子による受精のない単純な単為発生誘導によって雌性のみの一倍体が作出できる。そこで、まず単為発生誘起によって雌性ゲノムで構成される二倍体単為発生卵を作成したところ、胚盤胞への発生が確認され、さらにそこからES様細胞の樹立にも成功した。これは二倍体ではあるものの、雌性ゲノムのみによって構成されていることから、一倍体ES細胞の樹立の可能性を示す結果を得た。次に、顕微受精卵の発生初期に形成された雌雄前核の内の雄性側を顕微操作で除核した一倍体卵を作出し、体外培養した。その結果、胚盤胞への発生を確認することができたが、大きな胞胚腔を形成した拡張胚盤胞に成長することなく発生を停止した。ES細胞の樹立には至らなかったものの、一倍体卵の胚盤胞への発生が確認できたことは、今後の更なる成果向上につながる結果であると考えられた。
高い発生能を持つ一倍体の卵あるいは単為発生卵を作出するには、質の良い卵を作出することが重要となる。引き続き、メスへのホルモン投与方法(回数や間隔など)やhCG投与から採卵までの時間などの検討を継続し、当施設におけるカニクイザルのより良い採卵方法の確立を目指す。このようにして採取された成熟卵に対して顕微受精を行って作出した受精卵の発生能について確認するとともに、雌雄いずれかの一倍体ゲノムを持つ単為発生卵を作出する。単為発生卵の作出については、採取した成熟卵に対して直接単為発生誘起を行い、第二極体を放出させて、雌性一倍体を作製する。また、成熟卵の雌性ゲノムの除去後、精子を顕微注入することで雄性一倍体を作製する。あるいは、成熟卵に対して顕微授精を行い、雌性あるいは雄性前核の形成後にどちらかを除去することで、雌性あるいは雄性一倍体を作製する。これらを比較することで、受精刺激あるいは単為発生刺激による一倍体卵の発生能への効果を検証する。
他研究者からの譲渡により、消耗品への支出が不要となったものがあったため、次年度使用額が生じてしまった。次年度では、消耗品の購入に使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://tprc.nibiohn.go.jp/shimozawa/index.html