研究課題/領域番号 |
17K08147
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
金児 雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90633610)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 蛹変態 / 細胞死 / コミットメント |
研究実績の概要 |
昆虫は開放血管系であり、すべての組織が同時期に同濃度のホルモンに曝される。それにも関わらず、各組織のホルモン応答は、組織によって様々である。そこで各体節に存在し、体節ごとに異なるホルモン応答を示す分泌腺を主な対象として、時期・空間特異的なホルモン応答を生み出す機構についての解析を行っている。本年度は、各体節間で差異を見出すために、各体節間で発現の異なる遺伝子の探索に着手した。マイクロアレイを用いた体節間で発現する遺伝子の網羅的な解析結果を、定量PCRによって精査した。その結果、明確な体節特異性を示す遺伝子を10以上得ることが出来た。そのうち2つの遺伝子に対して、RNAiによる機能検定を行ったところ、一つの遺伝子において昆虫ホルモンの受容体への影響が確認された。また体節特異的に発現している他の遺伝子への影響を検証した結果、ノックダウンによって体節特異的な遺伝子発現を乱す遺伝子も見出せた。 またカイコ突然変異体を利用した体節特異性細胞死に対しての検証も開始した。変異遺伝子を持つ個体とそうでない個体のの区別のための分子マーカーを作成し検討した結果、遺伝の分離比および表現系とよく一致した。このマーカーを用いることで、表現系が出る前から原因遺伝子の変異をホモで持つ個体を特定できるようになった。そこでこのマーカーを用いて、RNAのサンプリングを行い、細胞死関連および昆虫ホルモンシグナルに関わる遺伝子発現解析の準備を整えた。このことによって、次年度以降の候補遺伝子の突然変異体での動向を調べるための基盤づくりが出来たと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、体節特異的な現象に関わる遺伝子の単離を進めると共に、それらの遺伝子の相互の関係性の検証を始める予定であった。実際に、体節特異的な遺伝子をノックダウンし、発現量の変化する遺伝子群の検証を行った結果、遺伝子間の相互作用の一部分を明らかに出来た。また、変異体を利用した候補遺伝子の解析も予定しており、そのために必要な、分子マーカーの作成ができた。また、来年度以降の解析に利用するためのRNAサンプルを用意することができた。以上の結果から、現在のところほぼ研究計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き候補遺伝子の探索を行うとともに、遺伝子の相互作用の検証に重点をおき、体節特異性に関わる機構の解明を行う。また体節特異性に関わる遺伝子のDNA配列の上流の共通配列を解析することにより、体節特異的な制御領域の探索を行う。さらに突然変異体を利用することで、体節特異性に関わるより普遍的な機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に予定していたカイコ突然変異体の解析において、変異体を区別するための分子マーカーの作成が計画よりも順調に進んだために、当初の予定よりも費用を抑えられた。そのために差が生じた。一方で、発現量に差がある遺伝子が、当初の予定よりも多く見出されたので、差額は翌年度の遺伝子の機能解析に当てる予定である。
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