昆虫を含めた動物がフリッカー光をどのように知覚し,フリッカー光に対してどう反応するのかについては,これまで断片的にしか明らかになっていない.本研究課題では,農業害虫チャバネアオカメムシにおいて予備実験で観察されたフリッカー光に対する特異的行動とそれに伴うフリッカー光源への低誘虫現象を基盤に,本種をモデルとして,可視周波数の電気生理学的・行動学的解析とフリッカー光の種々の属性に対する行動学的解析を行う.それらの結果に基づいて,フリッカー刺激を利用した新規の低誘虫技術の基礎となる知見を得ることを目的とするものである. 令和元年度は,「4.多種の昆虫類を用いたフリッカー光の低誘虫効果の検証」を進めた.波長,光強度,デューティー比(DR),変調深度(MD)を制御可能な大型のLEDパネル光源を用いて,チャバネアオカメムシの定位阻害を誘起する最適なフリッカー条件を,室内実験にて検証した.その結果,紫外から赤色までを含んだ光源において光強度と変調深度を固定した場合,緑色の波長帯を低いデューティー比でフリッカーさせた場合にチャバネアオカメムシへの低誘虫効果が高まることを明らかにした.また,直管型のLED光源と粘着シートを用いた屋外での捕獲試験により,フリッカー光の低誘虫効果を検証した.波長,光強度,周波数(50Hz)を等しくした2つのフリッカー条件(DR=50%,MD=50%とDR=25%,MD=75%)を比較したところ,ハエ目,ハチ目,カメムシ目を中心として捕獲された昆虫では,デューティー比が低く,変調深度が大きいフリッカー条件で低誘虫効果が高くなることが認められた.
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