本研究では、光周性研究のモデル動物である、チョウ目のサクサンとカイコを実験対象とし、日長測定(光周性)に関与する遺伝子の同定とその機能解析を進めた。具体的には、短日刺激群と長日刺激群の間で脳内遺伝子発現プロファイルを、次世代シーケンサを用いて網羅的に比較した。そして、日長変化に応答して発現変動を示す候補遺伝子に対し、RNAi実験によるさらなる機能解析を行い、目的遺伝子の絞り込み/同定を試みた。 短日下で休眠を維持し長日下では休眠を解除するサクサンの休眠蛹を用いたスクリーニングでは、約150個の候補遺伝子が得られた。そこで、その機能から関連性が高いと推測される候補遺伝子20個に対して、RNAi実験を行なった。その結果、2つの遺伝子について、光周反応に有意な影響を及ぼすことが判明した。1つはこれまでに昆虫の光周性に関与すると考えられるForkhead遺伝子で、もう1つは時計遺伝子としても働くGSK3bであった。 一方、親世代の幼虫期の日長によって次世代卵の休眠状態を決定するカイコを用いた研究では、複数のスクリーニング条件を用いて絞り込みを行ったところ、いずれの実験条件においても休眠卵産下群で増加する遺伝子が9個、非休眠卵産下群で増加する遺伝子が20個得られた。(以降、最終年度の成果)次に、リアルタイム定量PCRで次世代シーケンスの結果を検証したところ、休眠卵産下群で増加する4つの遺伝子について再現性が得られた。そこで、これらの4遺伝子に対してRNAi実験を行い、その内の2つの遺伝子について、短日刺激による休眠誘導効果を阻害する可能性が示された。現在は、結果確認のための、最終的な追加のRNAi実験を行なっている。 実験作業だけで3年以上かかってしまったが、当初目標としていた新規の光周性関連遺伝子を発見することができたと考えられる。今後は、上記の結果を論文・学会等で発表していく。
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