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2018 年度 実施状況報告書

長寿命昆虫ヤマトシロアリの生存戦略

研究課題

研究課題/領域番号 17K08152
研究機関山口大学

研究代表者

井内 良仁  山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (60272069)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード長寿命 / シロアリ / 抗酸化システム / 抗酸化酵素 / 低酸素 / 代謝調節 / 生存戦略 / 活性酸素
研究実績の概要

シロアリの生殖虫が「寿命と生殖のトレードオフ」を打ち破った希有な生物であることは古くから知られてはいたが, 主にそれは生態学的な研究対象で, 長寿命と多産を可能としたシロアリの生存・生殖戦略については全く未解明であった。私たちは最初に「シロアリ(生殖虫)は, その長寿命と高繁殖力を実現するために優れた抗酸化システムを有している」と仮説を建てており, その全容を明らかにし, ヒトへの応用可能な知見を得ることを最終目的としている。
現在までに, 1) シロアリ生殖虫は低酸素濃度に非常に耐性でかつ低酸素状態を感知して生殖能力を増大させられるなど低酸素状態に適応した代謝能力を有し, その際カタラーゼやペルオキシレドキシンなどの抗酸化酵素の発現を上昇させること, 2) シロアリカーストの中で最長寿とされている王について, DNA修復に関わる遺伝子群その中でも特にヒト乳がん関連遺伝子のBRCA1遺伝子が高発現していること, 3) シロアリ体内でコエンザイムQ10が抗酸化システムの一つとして重要な役割を担い, 寿命延長に積極的に関わっていることなどを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

生体サンプル(シロアリ生殖虫)の採取が十分にできなかったこと, 実験技術に熟練した大学院生が少なく研究効率が上がらなかったことなどが考えられる。

今後の研究の推進方策

女王の卵巣で顕著に高いカタラーゼ発現がヤマトシロアリの高い繁殖能力に関与するのかどうか, siRNA を導入して産卵数が減少するか検証する。またカタラーゼcDNAをショウジョウバエ卵巣で高発現させ, 産卵数の増加が見られるのか調べる。
シロアリ体内における尿酸の増減が合成能亢進によるものか, 腸内微生物による分解抑制なのかを, 合成酵素キサンチンオキシダーゼ遺伝子mRNAの測定ならびに腸内微生物量の測定評価により明らかにする。さらに経口摂取でシロアリの寿命を延ばすことがわかった尿酸の抗酸化物質としての機能・寿命延長効果が他種の昆虫でも共通なのかどうか, 尿酸をショウジョウバエに経口摂取させて酸化ストレスに対する抵抗性, 寿命にポジティブに働くか調べる。

次年度使用額が生じた理由

サンプル採取が十分に行えなかったことで多少の実験計画の遅延があったため, 測定試薬などの購入額に関して次年度使用分に繰り越された。実験計画の遅延を取り戻すべく当初予定していた研究に着手し必要試薬や測定キット類などの購入に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] High expression of the breast cancer susceptibility gene BRCA1 in long-lived termite kings.2018

    • 著者名/発表者名
      Tasaki E, Mitaka Y, Nozaki T, Kobayashi K, Matsuura K, Iuchi Y
    • 雑誌名

      Aging-US

      巻: 10 ページ: 2668-2683

    • DOI

      https://doi.org/10.18632/aging.101578

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification and characterization of protein N-myristoylation occurring on four human mitochondrial proteins, SAMM50, TOMM40, MIC19, and MIC25.2018

    • 著者名/発表者名
      Utsumi T, Matsuzaki K, Kiwado A, Tanikawa A, Kikkawa Y, Hosokawa T, Otsuka A, Iuchi Y, Kobuchi H, Moriya K
    • 雑誌名

      PloS one

      巻: 13 ページ: e0206355

    • DOI

      https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206355

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 長寿かつ多産を実現する抗酸化システム: シロアリの女王特異的に発現するカタラーゼの機能解析2018

    • 著者名/発表者名
      田崎 英祐, 松浦 健二, 井内 良仁
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 肥満モデルマウスに対する昆虫資源の機能性評価2018

    • 著者名/発表者名
      宮本実奈, 栗林宏美, 橋本麻奈美, 田崎英佑, 佐伯真二郎, 井内良仁
    • 学会等名
      第71回日本酸化ストレス学会学術集会
  • [学会発表] 長寿昆虫シロアリ女王の優れた抗酸化システム2018

    • 著者名/発表者名
      田崎英祐, 小林和也, 松浦健二, 井内良仁
    • 学会等名
      第71回日本酸化ストレス学会学術集会
  • [学会発表] 昆虫食の認知と普及について2018

    • 著者名/発表者名
      宮本実奈, 栗林宏美, 橋本麻奈美, 佐伯真二郎, 井内良仁
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部第51回講演会

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公開日: 2019-12-27  

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