2019年度は、セイヨウミツバチを用いて、1)濃度選択的な燃料蜜積み込みメカニズム解明のための実験と、2)濃度選択的な燃料蜜利用の適応的意義を明らかにするための実験を行った。 1)観察巣箱を用いて、採餌蜂が出巣蜜を受け取った直後に蜜供給蜂を捕獲し、蜜胃に残存している蜜をもとに、受け渡された蜜の濃度を調べた(2017年度の実験の反復)。花粉採餌蜂は、高濃度の蜜を提供された場合により長い栄養交換を行うことが確認された。このことから、低濃度蜜の受け取り量を減らすことが、花粉採餌蜂の高濃度の出巣蜜積載メカニズムになっていると考えられた。 2)花粉採餌蜂が高濃度蜜を巣から持ち出すことの採餌における意義を明らかにするため、コロニーに30%糖液を大量給餌し、花粉採餌蜂の出巣時積載蜜濃度を実験的に引き下げ、採餌成功への影響を調べた。対照として60%糖液給餌を行ったコロニーを用い、給餌そのものの影響を相殺した。その結果、30%糖液給餌区では、60%糖液給餌区よりも採集花粉量/個体(団子の乾燥重量)が10%以上も減少していることが明らかになった。また、30%糖液給餌区では、60%糖液給餌区に比べ、採餌蜂の出巣時積載蜜濃度は有意に減少しており、低濃度蜜を持ち出すことで採餌成功が低下することが示された。出巣蜜について、さらに詳しい解析を行うと、30%糖液給餌区では、60%糖液給餌区に比べ、出巣蜜量が増加していたが、それによる糖量の補正は不完全で、出巣蜜濃度と総糖量の間には有意な相関がみられた。このことから、低濃度蜜を利用した時に花粉採集量が減少する原因として、持ち出す糖の量が減少することで、燃料や花粉団子のつなぎとして必要な糖が足りなくなること、または低濃度蜜の粘度が低いために大きな花粉団子を形成できないことが考えられた。
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