研究課題/領域番号 |
17K08156
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
田中 龍一郎 摂南大学, 薬学部, 講師 (80236653)
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研究分担者 |
山口 昌之 摂南大学, 薬学部, 研究員 (40193586)
伴野 豊 九州大学, 農学研究院, 教授 (50192711)
坂崎 文俊 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (90309378)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カモミールフェニルプロパノグルコシド / 油蚕 / 尿酸代謝 / 経口投与 / バイオアベイラビリティ / アラントイン / HILIC / カミツレ |
研究実績の概要 |
高尿酸血症改善作用を指標とした資源植物,とくにハーブ含有成分(全23種)のスクリーニングからカミツレ、イノンドを含む7種の植物資源が見出された。次に治療薬レベルの活性体の存在が示唆されたイノンド、カミツレエキス由来の活性フィトケミカルの単離、同定ならびに構造決定を行った。イノンドの活性フラボノイドは,種々のケミカルデータ,各種スペクトルデータの解析から新規なイソラムネチングルクロニドとケルセチンのそれと判明した。とくにカミツレからは強いXOR阻害活性と熱,光安定性をもつフェニルプロパノイドグルコシドが得られた。 良好な水溶解性を示すカミツレ由来フェニルプロパノイドグルコシド(CPPG)の粗画分が比較的多量に精製できることから,このものを用いたマウス経口投与による血中移行性試験を実施し,経時的な血中濃度変化を観察した。それらには試験管内で示された有意な阻害活性を示す活性体濃度の15-20倍の値が検出され,その有望なバイオアベイラビリティが示唆された。これを受け急遽,モデルマウスに対する経口投与による血中尿酸値低下作用試験を行ったところ,予想されたとおり有意な尿酸値低下作用が示された。尚、カミツレ活性体 CPPG が示すXOR 阻害活性は,ラジカル消去作用に起因する直接的な抗酸化作用ではないことも確認した。 一方,5 齢期 o06 系統油蚕ではその血中 UA がエンドプロダクトとして代謝制限されていることが明らかとなり,アラントインに分解して尿排泄できるマウスと比べ、同油蚕がヒトに近似する病態モデルである事が示唆された。さらにフェブリク(高尿酸血症治療薬)の油蚕への経口投与でも,疑似静注や経腸投与と同様に有意な有効性が確認され,評価系におけるポジティブコントロールとしてアロプリノールと同様に利用可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
薬用ハーブエキス(23種)について試験管内での酵素阻害試験と油蚕への腸管内、疑似静注による血中尿酸値低下作用による評価を行った。この結果,高尿酸血症改善作用が示唆されるカミツレ,イノンドを含む7種の有用資源が見出された。イノンドの活性フラボノイドは,種々のケミカルデータ,各種スペクトルデータの解析から新規なイソラムネチングルクロニドとケルセチンのそれと判明した。またカミツレの活性フェニルプロパノイド配糖体(CPPG)の同定を行い,その強い活性と熱/光安定性を確認した。 良好な水溶解性を有するCPPGの粗画分は比較的多量に精製出来ることから,これを用いたマウス経口投与による血中移行性試験を実施し,血中CPPGを同定し,経時的な濃度変化を確認した。同血中濃度が有意な活性濃度の15-20倍の値を示したことから,その良好なバイオアベイラビリティが示唆された。この為、30年度実施予定のモデルマウスへの経口投与試験を前倒しで実施し,有意な尿酸低下作用を確認した。またCPPGのラジカル消去率は、カフェー酸やクロロゲン酸と比べ低値であり,in vitroでのXOR阻害活性が直接的な抗酸化作用によるものではないことが示された。 同時に o06系統油蚕の尿酸代謝(血液)と排泄(糞)について,絶食と高尿酸血症治療剤の経口投与での影響を観察した。絶食群の血中UA値は低い傾向を示し、Alla値には差が見られず,両者の糞中UA総量に差はなかった。フェブリクの投与は糞中UA総量を減少させ、蚕尿中に数%のUAを排泄させた。このことは油蚕血中 Allaが一定濃度で維持され、それを超える UA は分解せずそのまま蓄積されることを示した。このように 5 齢期油蚕の血中 UAはエンドプロダクトとして代謝制限され、Allaに分解し容易に尿排泄するマウスと比べ、油蚕がヒトに近似する病態モデルである事を示した。
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今後の研究の推進方策 |
【高尿酸血症改善作用を指標としたハーブ類含有成分のスクリーニング】今回見出されたカミツレ,イノンド由来以外の植物資源に含まれる活性体の探索をin vitroでのXOR阻害活性と油蚕での薬理試験を併用して継続する。
【治療薬レベルのカミツレ活性体(CPPG)のマウス経口投与による血中移行性試験】長期,継続的な経口投与におけるマウスへの影響(血中濃度変化と臓器残留性)の検討を行い、同時にモデルマウスを用いた経口投与時の最小有効濃度を測定する。
【o06系統油蚕の高尿酸血症モデルとしての検証】o06系統油蚕の高尿酸血症モデルとしての有用性の検証を行う。すなわち,すでに油蚕への経口投与でその有効性が確認されているフェブリク(高尿酸血症治療薬)をポジティブコントロールとして用い,CPPGを長期経口投与してその効果を観察し、最小有効濃度の測定も試みる。このために油蚕尾角からの連続採血により経時的な血中尿酸値、アラントイン値の変化の詳細を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の所属研究機関で動物飼育室の改装作業を行い、動物を飼育できない期間があった。飼育が可能になったあと、実験結果に異常値が認められ、原因解明のために試行錯誤をしていて研究を予定通りに進行できなかった。 改装で用いられた建材等から揮発した物質が影響した可能性が考えられるが、空気中に揮散させた試料を実験動物に吸引させるような施設を有していないため、解明することはできない。原因は解明されていないが、徐々に実験結果の数値が元の値に近づいてきたため、あらためて計画の研究を再開する。
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