昆虫媒介性の植物病原ウイルス病による作物被害を食い止める新規技術開発が求められている。一方、昆虫体内で感染・増殖しているウイルスは、宿主昆虫のRNA干渉作用を阻害する因子(VSR)を産生することで、昆虫体内での抗ウイルス作用を回避していることから、こうしたウイルス因子の機能を阻害する技術が開発できれば、ウイルス阻害昆虫を標的とした画期的なウイルス伝搬阻止技術となりうる。本研究ではこうした技術開発に不可欠な基礎的知見を得るため、重要な昆虫媒介性植物ウイルスを対象とし、宿主昆虫体内で機能するウイルスVSRの同定及び機能解析を目的とした。 ショウジョウバエ由来のS2培養細胞を用いたVSRアッセイ系を構築し、本アッセイ系を用いてトビイロウンカが媒介するイネラギットスタントウイルス、イネグラッシーウイルス、ツマグロヨコバイが媒介するイネ萎縮病ウイルス由来のセグメントに対し、VSRの機能を有するかを調査したところ、イネ萎縮病ウイルス由来のセグメントに有意なVSR活性を示すことが明らかになった。さらに12種類の植物病原ウイルスにも着目してVSRの機能をもつセグメントを探索したところ、Potyvirusに属するウイルス由来のセグメントに強いVSR活性(対象区と比較して7倍~20倍以上上昇)することが示された。現在、VSR活性が示された複数の因子がRNA干渉反応のどのステップを阻害しているかについて解析を進めている。
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