物発現用ベクターは、フゾリン遺伝子(ドウガネブイブイ寄生の昆虫ポックスウイルス由来)及びBt毒素(CryA1c)遺伝子の単独、あるいは両方、プロモーターは、35Sプロモーター、またはより高発現を目指したRubisCOプロモーターを35Sプロモーターに連結したものとして、ブロッコリー(緑嶺)およびタバコ(SR-1)に導入した。PCRによってフゾリン遺伝子又はBt毒素遺伝子が確認された系統の一部では交配によりF1個体を得ており、今後の分析用としてブロッコリーでは蕾授粉によりF2個体を増殖した。 Bt毒素遺伝子あるいはフゾリン遺伝子を導入したタバコ及びブロッコリーの葉を粉末にし、単独、または両者を腐葉土に混ぜ、ドウガネブイブイを用いたアッセイを行った。手法は平成28年度と同様に1齢、2齢幼虫を飼育し、前者は4日後、後者は7日後の死亡率を腐葉土のみで飼育した場合と比較することにより、粉末の殺虫性を評価した。また、マメコガネによるアッセイを行うため研究所内のほ場に非組換えのダイズを栽培し、それを食害するマメコガネを捕獲して供試した。その結果、Bt毒素遺伝子単独発現葉の粉末により殺虫効果が認められた。昨年度フゾリン発現葉を加えてもBt毒素の殺虫活性の増進は認められなかったことから、本年度は、得られたフゾリン発現植物の中からRT-PCRによってフゾリンの発現量の多い系統を選抜し、それらの葉を用いて殺虫性に及ぼす相乗効果を確認したが、顕著な殺虫活性の向上は認められなかった。問題点として、フゾリンの発現量と囲食膜の破壊についての知見を集積し、囲食膜の破壊に必要なフゾリン量を確定し、それに足りうる蓄積を促すプロモーター等の改良を行い、さらにフゾリン発現量の高い系統の作出が必要と判断された。
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