研究課題/領域番号 |
17K08162
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
永峰 俊弘 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 専任研究員 (90237553)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バキュロウイルス / 昆虫細胞 / タンパク質合成系 |
研究実績の概要 |
本研究は、ウイルスによる宿主細胞のシャットオフ機構を解明し、得られた知見を基にして、昆虫細胞によるバキュロウイルス非依存型高効率タンパク質発現系を構築することを目的としている。そこで29年度は宿主細胞のタンパク質発現抑制(シャットオフ)機構に関連するウイルス遺伝子を探索するため、RNAi法を使ってノックダウン実験を行った。当初の実験計画では各遺伝子から500bp程度のDNA断片をPCR増幅し、次にその増幅断片を用いて、2本鎖RNAを合成する2段階反応を行う予定であった。しかしより効率的にRNAiスクリーニングを行うため、in vitro Transcription T7 Kit (Takara)を用いて、1段階でsiRNAを合成して、得られたsiRNAをトランスフェクション試薬を用いてカイコ細胞に導入する方法を検討した。具体的には、先ずsiRNAのセンス鎖、アンチセンス鎖それぞれに対して一組ずつ、計4本について適切な向きにT7プロモーター配列を付加したオリゴヌクレオチドを適切な組み合わせでアニーリングし、この鋳型DNAを使ってin vitro Transcriptionを行う。最後にRNaseT1処理を行ってsiRNAを合成する。実際、この方法で作製したsiRNAとGFP遺伝子を同時にトランスフェクションしてRNAi実験を行った結果、抑制効果が確認できた。しかし、複数回同じ実験を繰り返した場合には時として効果にばらつきも認められた。ウイルス感染に対するsiRNAの効果はトランスフェクション効率が低いために十分な抑制効果が得られなかったが、ウイルスのゲノムDNAとsiRNAを同時にトランスフェクションすることによって抑制効果を検証できた。今後はトランスフェクションの必要がないBmN4-SID1細胞を使ってRNAiスクリーニングを進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始前より進めていた「バキュロウイルス感染に伴う宿主細胞の内膜脂質のグローバルな再構築」研究に予想していたより多くの時間を費やしてしまったために本研究の進捗状況がやや遅れ気味となっている。しかしそのおかげで上記研究は現在論文を投稿することが出来、また、本研究にも良い影響を及ぼしている。すなわち、上記研究はバキュロウイルスが自身のウイルス膜を形成するために核内に脂質を蓄積すること、またそのために、宿主細胞の内膜全体の脂質配向を大きく変化させることを明らかにしている。従って、この宿主内膜構造変化を抑制することによって、発現タンパク質の精製過程を簡素化できる新規の分泌型バキュロウイルスベクターを構築することが可能となる。そこで今後はRNAi法によるノックダウン実験を使って、本研究で行うタンパク質発現抑制機構に関連するウイルス遺伝子探索に加えて、宿主内膜構造変化に関連するウイルス遺伝子も探索する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス感染に対するsiRNAの効果はトランスフェクション効率が低いために十分な抑制効果が得られなかったが、ウイルスのゲノムDNAとsiRNAを同時にトランスフェクションすることによって抑制効果を検証することができた。そこで、今後はトランスフェクション効率の問題を回避するため、BmN4-SID1細胞を使ってRNAiスクリーニングを進める予定である。BmN4-SID1細胞はトランスフェクションではなく、2本鎖RNAを培地に加えるだけで、2本鎖RNAが細胞に取り込まれることが知られている。したがって、この細胞を用いることによって効果的なRNAiスクリーニングが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究開始前より進めていた「バキュロウイルス感染に伴う宿主細胞の内膜脂質のグローバルな再構築」研究に予想していたより多くの時間を費やしてしまったために本研究の進捗状況がやや遅れ気味となっている。このため、本年度siRNA合成のために予定していた予算などを次年度に繰り越して使用する予定である。
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