研究課題/領域番号 |
17K08173
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
松井 徹 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (90372812)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオ脱硫菌 / トランスポゾン / 酸性雨 / Rhodococcus |
研究実績の概要 |
1.微生物分解経路の解析およびマトリックスの作成 微生物分解マトリックス化試験の対象化合物として、遺棄化学兵器のモデル化合物クロロエチルエチルスルフィド(CEES)、クロロエチルフェニルスルフィド(CEPS)の分解を検討した。研究室保存のベンゾチオフェン(BT)およびジベンゾチオフェン(DBT)脱硫菌計8株を用いて、CEES、CEPSを唯一の硫黄源として生育する菌(脱硫菌)を選抜した。これらの基質を資化生育する菌株はすべてBT脱硫菌であり、両基質の脱硫菌3株を用いて、代謝物の解析を行った。現在のところ、CEPSについてのみ分解代謝物が得られており、S酸化化合物であるスルホン、脱塩素化合物がGC/MSにより同定されている。脱硫された代謝物を検出できていないため、継続して検討し、CEES, CEPSの脱硫分解経路を明らかにするとともに、分解関連酵素の影響についても明らかにする。 2.分解関連遺伝子の解析 本年度は、芳香族縮合型複素環化合物(aromatic condensed heterocyclic compounds、以下ACHC)のうち、有機硫黄化合物(organic sulfur compounds、以下OSC)分解関連遺伝子の解析を中心に行った。昨年度、確立したT09株のトランスポゾンによる遺伝子破壊条件を基盤に、遺伝子破壊株ライブラリーを構築した。96穴ディープウエルプレートによるOSC資化能欠損株のスクリーニング可能な系として水溶性OSCのチオジグリコール(TDG)を硫黄源とした結果、約500株から8株が選抜された。更に、inverse PCRによる破壊遺伝子の解析、ACHCである5-methyl BTに対する資化能などを検討した結果、ACHC資化に関連するトランスポータの存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.微生物分解経路の解析およびマトリックスの作成:微生物分解経路の解析は、新たに検討開始した化合物(CEES、CEPS)の脱硫菌の選抜に成功したことから、詳細な検討を進める基盤ができたといえる。2.分解関連遺伝子の解析:遺伝子破壊株ライブラリーの構築と当該ライブラリーからの脱硫能欠損株の選抜は、解析結果から選抜方法の適正が検証されたため、学会発表を行った。 前者は、分解経路の全容解明が必要であり、後者は、分解に直接関連する酵素系遺伝子や分解オペロンに関連する遺伝子破壊株の取得ができれば、さらに成果発表可能である。いずれも最終目標に達したとは言えないが、検討の基盤を確立した。 以上のことから、当該年度計画事項に関しては概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1.分解関連遺伝子解析-前年度に検討を開始した分解関連遺伝子解析を継続し、分解酵素遺伝子の発見を目指す。 2.新規微生物の探索-微生物ライブラリーの拡充を目的として国内外環境試料からの各種芳香族縮合型複素環化合物分解菌の探索を高塩濃度条件下で実施することで新種微生物の取得をめざす。国内試料として周辺の土壌試料だけでなく、動物の糞内の腸内微生物など、これまで検討の少なかった試料を用いた探索を試みる。従来法にみられる炭素源としての分解菌の探索は行わず、培地に硫黄源フリー培地にDBTなどの有機硫黄化合物を唯一の硫黄源とする集積培養を行うことで新規微生物取得の可能性を高くする。 3.微生物ライブラリーによる複合基質の分解-環境中での分解挙動を知るために、基質を混合し、上記分解マトリックスデータを元に選抜した分解微生物と複合基質の分解経過を解析する。各種基質の分解の優先順位、分解微生物を混合した場合の残存性と培地組成の関係を明らかにする。 4.芳香族縮合型複素環化合物(ACHC)分解速度の改良-前年度既に検討を開始し、分解を確認した化学兵器モデル化合物CEES、CEPSと脱硫遺伝子群dsz発現ベクターによる組換え菌を用いた分解速度の改良を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表を1回にまとめたため、当初予定の2学会参加が1学会に減少した。また、培養抽出物解析による代謝中間体の構造を速やかに決定できたため、分析関連経費が抑えられた。 次年度は、国際会議参加を含め、積極的に学会発表を実施すると共に、代謝中間体の構造決定を促進するために外注分析も検討していくこととする。 次年度使用計画(概算 単位;円);学会参加(国内2名、2回)200,000(計画通り)、学会参加(国外1名、1回)300,000(計画増)、消耗品等800,000(計画通り)、計1,300,000
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