研究実績の概要 |
環境汚染関連物質には、ジベンゾチオフェン(以下DBT、石油含有物としての酸性雨の原因物質)、スルホランなど汚染源は異なるものの硫黄を含んだ有機化合物が少なくない。このうち、DBTは芳香族縮合型複素環化合物(aromatic condensed heterocyclic compounds、以下ACHC)であるが、ACHCに属する環境汚染物質は、ジベンゾフラン、カルバゾールなど数多い。本研究は、有機硫黄化合物と微生物分解の関連を明らかにするために、代表者の保管するバイオ脱硫細菌等を用いてACHCの分解性について検討した。DBT脱硫菌は、フェノキサチイン(PX)、フェノチアジン(PH)、チアンスレン(TH)を硫黄源として生育したのに対し、BT脱硫菌は生育しなかった。得られた培養液の酸性酢酸エチル抽出物をGC-MS分析することにより分解中間体の構造を推定した結果、上記のいずれの基質を用いた場合においても、CS結合開裂により生成すると推定されるフェノール性化合物が認められ、これまで報告のある芳香環開裂型分解菌と異なる分解経路によることが明らかとなった。 本年度は、ACHC類の分解系遺伝子を明らかにするため、バイオ脱硫細菌のDBT脱硫遺伝子群dszをRhodococcus属細菌内で発現し、分解性を検討したところ、PX,PH,THいずれも新規分解経路により分解されることが明らかとなった。また、微生物分解マトリックス化試験の対象化合物として、遺棄化学兵器のモデル化合物クロロエチルフェニルスルフィド(CEPS)の分解が確認されたので、分解経路の解析を行った。その結果、スルホン化、脱塩素化化合物が検出された。以上の結果より、本研究の目的である、ACHCの微生物分解性の解明は達成されたが、ACHC以外の有機硫黄化合物にも重要なものは多く、引き続き検討する必要がある。
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