研究課題/領域番号 |
17K08176
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
染谷 信孝 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 上級研究員 (60360575)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 植物保護細菌 / 抗菌物質 / シグナル / 増強 / 包括制御 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、植物保護細菌Pseudomonas chlororaphis Tre132株において抗菌要因であるhydrogen cyanide (hcn)、pyrrolnitrin (prn)およびphenazine (phz)生合成遺伝子欠損株および多重欠損株を作製し、その抗菌活性および生物防除効果を検定した。その結果、前年度までに解析してきた植物保護細菌Pseudomonas protegens Cab57およびその近縁細菌種(Pseudomonas sp. Os17、Pseudomonas sp. St29、Pseudomonas sp. St290)と異なり、hcn欠損株において著しい抗菌活性の増強は観察されなかった。この結果はhcn生合成遺伝子の欠失が引き起こす他の二次代謝産物生合成能の増強が種レベルで異なる可能性を示唆した。一方でhcnの欠失は、抗菌性二次代謝産物以外の形質へも影響する可能性が確認された。すなわち、P. chlororaphisにおいては2,4-diacetylphloroglucinol(phl)生合成能がないため、他種において観察されたhcn欠失が引き起こすphl産生の過剰発現が起こらないために、著しい抗菌活性の増強が観察されないものと推測された。 一方で、P. chlororaphis種においては鉄分キレート物質であるシデロフォア産生能にも影響している可能性が示唆された。シデロフォアは植物病原体との競合能への関与が示唆されているため、生物防除効果にも影響する可能性が推測された。生物防除効果および植物体への影響については次年度も引き続き解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物保護細菌として知られる複数の細菌種において、特性抗菌要因がシグナル分子として機能しており、その欠失が及ぼす影響が細菌種によって異なることが確認できた。植物保護細菌の植物保護作用の制御メカニズム解明について順調に解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
複数の抗菌物質生合成能を有する異なる植物保護細菌種において、同一の一要因の欠失が引き起こす、異なった表現形質への影響が解明されつつある。生物農薬としての植物病害防除効果において重要な形質とそれを制御するメカニズム解明は安定した生物農薬作用を担保するために重要であると考えられる。当初計画通り、複数の植物保護細菌種における特定要因欠失が与える影響を引き続き解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
雇用していた研究補助員が退職(家庭事情による自己都合)したため、人件費・謝金額が当初予定よりも減額した。研究全体としては順調に進んでいるが、表現形質解析を優先して実施したため、外注を要するサンプルの塩基配列解析を次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。
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