研究実績の概要 |
植物病原体から植物を保護する能力を有する細菌、植物保護細菌、特にPseudomonas protegens(Pp)およびPseudomonas chlororaphis(Pc)種について、その作用機構および能力増強メカニズムの解明を行った。まず、Pp種において抗菌物質Hydrogen cyanide(HCN)およびpyoluteorin(PLT)遺伝子を欠失すると別な抗菌物質である2,4-diacetylphloroglucinol(PHL)産生量が増大して植物保護効果が増強していた。この際、ΔHCN株においては、二次代謝産物の包括的制御を担うsmall RNA活性が増強されていることが判明した。一方、Pc種ではΔHCN株において顕著な植物保護効果の増強は認められなかった。これは本種ではPHL産生能がないことに起因する。Pc種では抗菌物質phenazine(PHZ)が主要な植物保護要因となるが、PHZの産生増強は認められなかった。一方でΔHCNはPc種においても二次代謝産物産生能に影響を与えていることが明らかとなった。Pc種におけるΔHCNは、鉄分キレート物質であるシデロフォア産生能を増強させていることが明らかとなった。HCNの欠失は植物保護細菌種の種を越えて、それぞれの種における二次代謝産物産生能へ影響を及ぼす可能性が推測されたことから、別途、実施者が単離した、HCNおよびPHL産生能を保有するPseudomonas spp.株[ Os17(Pseudomonas saponiphia種近縁)、St290(Pseudomonas brassicacearum種近縁)]について、ΔHCN表原形質を検定した結果、Pp種と同様にPHL産生能と植物保護効果の増強が認められた。
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