4種類の施肥条件(速効性アンモニウム系肥料または尿素(A)、被覆尿素(緩効性アンモニウム系肥料;CU)、被覆硝酸カルシウム(CC)、無窒素(N))で室内土壌培養試験(密閉法)を行った。A区のN2O積算発生量は低温(15℃)条件で高温(25℃)より高く、CU区では逆に高温条件で高くなった。また、高温条件ではCU区がA区より高いN2O積算発生量であったが、低温では逆にA区の方が高い発生量であった。これらの試験結果は、緩効性アンモニウム系肥料による硝化由来のN2O生成の抑制効果は明確ではないこと、また寒冷な北海道においても温暖地域と比べて低いN2O発生になるとは限らないこと、を示している。一方、CC区からのN2O発生はN区とほぼ同等の低い値であり、被覆硝酸系肥料が硝化由来のN2O排出削減に有効な肥料資材であることが、示された。 低酸素(O2)濃度条件で土壌培養試験(通気法)を行った。N2Oおよび一酸化窒素(NO)の有意なフラックスはともに、O2濃度が0.1%以下(大気レベルの1/200以下)になったときにのみ観測された。この試験結果は、実際の圃場においても、降雨後等に土壌内間隙のO2濃度が局所的に0.1%以下になったときに、脱窒によるN2O生成が大きく促進されていることを、示すものである。 圃場におけるニンジンおよび小麦栽培試験では、施肥直後のN2O発生に付随するNO発生は観測された一方で、降雨後等のN2O発生に付随するNO発生は観測されなかった。このことは、寒冷・積雪地域の北海道の畑地においても、施肥直後のN2O生成は主に硝化により、降雨後のN2O生成は主に脱窒により、それぞれ生成されていることを示すとともに、室内実験の結果と併せて、硝化によるN2O生成が卓越する土壌の圃場においては、硝酸系肥料の施用による有意なN2O排出削減が可能であることを示している。
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