最終年度は敷地レベル並びに広域レベルのグリーンインフラ(GI)導入手法に係る補足調査を行った。敷地レベルのGI導入では、一般的な緑地計画と同等かそれ以上に階層性を踏まえたGIのニーズ・機能の把握が重要であること、広域的なGIネットワークを構成する要素としての敷地レベルのGIという視点が求められることを、イングランドにおける広域自治体及び基礎自治体のGI計画の調査から明らかにした。また、以上の計画立案を円滑かつ証拠に基づいて進めるための手段として、イングランドで実用化されているGIマッピングデータベースの有効性を確認した。 広域レベルのGI導入については、本邦では、例えば淀川水系寝屋川ブロックの河川整備計画における治水緑地や多目的遊水地の計画に、その萌芽を見て取ることができる。この計画がなぜGIの広域計画と呼べるのか、この計画で整備された治水緑地や多目的遊水地がなぜGIと呼べるのか。その理由として、ニーズ(この場合は治水上必要となる貯留量)と機能(現時点で達成している貯留量)のギャップを埋める戦略的な計画という、インフラの基本的な計画手法が展開されていること、自然立地や歴史的な土地利用を踏まえた治水緑地・多目的遊水地の配置が行われていること、それらを緑地化することで治水にとどまらない多様なサービスを実現していることなどがあげられる。 このような意味でのGIの広域計画、とりわけニーズ評価に基づく戦略的な計画手法が本邦GI計画のモデルとなる。ところで、気候変動適応に代表される今日的なニーズ(社会課題)に対処するには、多くの場合GI以外のインフラによるサービスも重要となる。そこでは、他のインフラと共にGIがどの程度のサービスを分担するべきかという問題が生じるが、これについて一般的な判断基準を設けるのは恐らく難しい。地域の特徴や実情に応じて個別に判断、決定されるべきであろう。
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