研究課題/領域番号 |
17K08185
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
美濃 伸之 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 教授 (00336835)
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研究分担者 |
嶽山 洋志 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 准教授 (40344387)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公園緑地 / 障害者 / バリアフリー / ユニバーサルデザイン / 人材養成 |
研究実績の概要 |
本研究では、緑地環境ユニバーサル化のための合理的な配慮を支援できる人材(ユニバーサル化・コーディネータ)を養成すべく、その具備すべき要件を明らかにするとともに、人材養成のためのカリキュラムを構築、社会人向けの公開講座を実際に運営することを通して、その有効性を検証する。
まず、コーディネータが具備すべき基礎要件を2つに大別し、その整理に取り組む。要件の1つ目は、緑地環境プログラムの提供にあたり、主な障害(移動、視覚)により、何がどの程度妨げられるのかを適切に理解することとし、その内容は障害当事者から見たプログラム難易度とその評価プロセスを詳細にヒアリングすることにより明らかにする。要件の2つ目は、どのような具体的方法によってプログラム提供の範囲がどの程度広がるのかについて理解があることとし、その内容は主要な利用場面毎(見る、遊ぶ、学ぶ、体験する、交流する等)に、先進事例による取り組みの方法別出現頻度を算出し、その重要性を評価することにより明らかにする。これら一連の作業により、緑地環境プログラムに生じるバリア特性とともに、利用場面毎のユニバーサル化にかかる合理的配慮の具体方法が整理され、当該コーディネータの基礎要件が明らかとなる。
次に、コーディネータ養成カリキュラムの作成およびその運営に取り組む。バリア特性理解のためのカリキュラム作成においては、実践性確保の観点からバリアの共感的理解につながるよう疑似体験等の現地実習を積極的に取り入れる。ここでは、実習が単なる個人体験にとどまらぬよう、障害理解の専門家による解説および実習後の振り返りを徹底する。また、プログラム提供方法の多様化の具体的手段の理解についても、様々なツールによって何がどの程度改善されるのかについて、受講生の気づきを誘発するように工夫した講義・演習とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備調査として、既存のバリアフリー研修の概要を調査、その特徴を把握すると共に、社会人向け講座の試験的運用を実施した。まず、既存バリアフリー研修についてであるが、サービス介助士向け、交通事業者向け、もしくはパラリンピック等への対応の必要性から実施しているものが主であった。内容的には、対象者に応じたカリキュラムが組まれ、基礎知識修得と気づきを誘発する体験、グループディスカッションを組み合わせたものが多く、期間は1日ないしは2日間であった。他には博物館関係者向け、テクノロジーを活用した特殊教育従事者向けなどがあった。課題としては、気づきを誘発されてはいるものの、職務との関連性については自発的なものにとどまっていたことが挙げられた。社会人向け講座の試験的運用については、淡路景観園芸学校・景観園芸専門講座「都市公園マネジメント」の一環として実施した。ここでは、障害当事者かつ研究者の2名を講師とし、受講生は公園管理の実務に従事する12名を対象に、講義と具体的な職務を想定した演習を内容とした。アンケートや振り返りの議論から、受講生からの評価は高かったものの、業務での場面との結びつけ方、具体例紹介や談話的な進め方、マナー向上や一般利用との調整に関する内容付加などに課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、バリアフリー要素と公園管理やそれにかかる施設整備等との関連性の理解を促す実際の試行カリキュラムを検討し、講座の試験運用を継続する。また、バリアフリー要素が主流化されている動的営みについての調査を継続、特に観光バリアフリーに関するものに重点を置き、調査を行う。まず、講座の試験運用としては、15回を想定した講義+演習タイプ、90分ないしは1~2日間を想定した対応の2つにて実施する。前者においては、基礎的知識や事例紹介に公園緑地利用の場面を想定した演習を加え、幅広い対象者への対応を検討する。後者は、実務者レベルでの定常的運用を想定し、現場ですぐに活用できる実践的スキル修得に重点を置いて検討する。一方、バリアフリーの主流化が見込める動的営みについては、観光分野および防災分野での取り組みについての調査を実施する。観光については、観光バリアフリーに長く取り組んでいる三重県や沖縄県の取り組み、さらには台湾など海外事例の調査も実施する。防災については、先進事例はもとより、営みが持続可能なレベルに到達している事例を幅広く調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費は、カリキュラム検討のための現地調査旅費、および講座運営のための謝金、外部講師旅費、使用する機器購入や事務費等に充当する。次年度は兵庫県内での社会人講座の試行に加えて、福岡県、千葉県での講座試行を予定しており、兵庫~福岡、兵庫~千葉間の打ち合わせのための旅費が必要であるほか、演習を実施するためのプロジェクタやメディア、記録機器を購入する費用、ならびに講師招聘のための旅費や謝金が必要である。また、ヒアリングした結果や講座運営の様子を記録したデジタルオーディオやビデオデータのデータ量は膨大であるため、これらの収集および整理にかかる研究補助経費も必要である。さらに、最新情報の収集や研究交流のために海外旅費が必要で、2018年はTRANSEDというバリアフリー関連の国際学会が開催される年であり、それへの参加費用を見込んでいる。
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