研究課題/領域番号 |
17K08188
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
上野 裕介 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (90638818)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 空間生態学 / 水田生態系 / ドローン / 水路ネットワーク / リモートセンシング |
研究実績の概要 |
本研究は、既存の国土に関する基盤情報(植生図、地形図などのGIS情報)と現地計測の間にあった環境データの空間ギャップを、ドローンによる空撮データで補完することで、より精緻に生物の分布パターンを把握する基盤技術の研究である。特に、水田環境の指標生物であり、生態的特性が異なるバッタとドジョウ、カエルをモデルケースとし、各種の生息ポテンシャルを予測・評価する数理モデル(生息適地モデル)を構築し、自然環境情報の空間スケールと解像度の違いが、生物の分布パターンの予測精度や予測の頑健性に及ぼす影響を明らかにする。 今年度は、昨年度試行したSfM技術を用いた地形測量をより詳細に検証・検討するために、石川県能登半島(珠洲市)ほかの水田地帯において、ドローンによる空撮と植生把握、SfM技術を用いた地形測量を実施した。また、各調査地において水田生物(バッタとドジョウ、カエルなど)の調査を実施するとともに、水路・魚道ネットワークに関する空撮画像を取得した。さらに、水田生物の分布調査の結果(バッタ、ドジョウ、カエルの生息状況調査)と複数の空間スケールの環境基盤情報を基に、生息適地の予測モデルを試作した。この生息適地モデルには、統計モデルを用いたパターン解析の一種であり、ある環境条件下での生息可能性(ポテンシャル)を広範囲で評価・予測できる帰納的アプローチを採用した。 次年度は、これらの局所スケールの生物情報・地理空間情報と、既存の国レベルの基盤地図情報を、GIS上でシームレスに統合し、試作した水田生物の生息適地モデルについて現地調査による検証を行い、ブラッシュアップを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度(初年度)は、研究代表者の所属機関変更に伴って調査地の再選定と研究計画の練り直しの必要が生じ、当初想定していた春季の野外調査を実施することができなかった。そのため、今年度に、これらの野外調査を改めて実施することとなった。特に本研究において重要となるドローンによる空撮と植生把握、SfM技術を用いた地形測量については、今年度、複数の条件下で実施し、水田地域を対象に植生図と微地形図、水路・魚道ネットワーク図の試作を行い、GISを用いて局所スケールの地理空間情報を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成30年度に引き続き、作成した調査対象地区の詳細な植生図と微地形図、水路・魚道ネットワーク図ならびに、生物の分布予測モデル(生息適地予測モデル)の改良を目的として、現地調査(水田のバッタ、ドジョウ、カエルの生息状況調査)を実施する予定である。さらに、これらの調査結果をもとに、従来、別々に扱われてきた国土・景観スケールと局所スケールの地理空間情報に加え、その間にある情報の空間ギャップを補完し、空間ギャップが予測精度と頑健性に及ぼす影響を、複数の空間スケールで同時に評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度(初年度)に、研究代表者の所属機関変更に伴って調査地の再選定と研究実施スケジュールの練り直しを行ったため、当初想定していた春季の野外調査を実施することができなかったことから、これらの調査を改めて今年度に実施した。このため、それらの実施に見込んでいた昨年度の旅費や物品費、謝金等の費用も今年度に使用した結果、重複する調査や情報収集等にかかる費用を削減することが可能となり、今年度分の使用額を当初予定額よりも圧縮することができた。これらのことから、次年度使用額が生じることとなった。
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