本研究は、既存の国土に関する基盤情報(植生図、地形図などのGIS情報)と現地計測の間にあった環境データの空間ギャップを、ドローンによる空撮データで補完することで、より精緻に生物の分布パターンを把握する基盤技術の研究である。特に、水田環境の指標生物であり、生態的特性が異なるバッタとカエルをモデルケースとし、各種の生息ポテンシャルを予測・評価する生息適地モデルを作成し、自然環境情報の空間スケールと解像度の違いが、生物の分布パターンの予測精度や予測の頑健性に及ぼす影響を検討することを目的とした。 期間を通じて、石川県能登半島(珠洲市)にある里山的景観の水田において、水田生物(バッタとカエルなど)の調査を実施した。さらに、ドローンによる空撮と植生把握、SfM技術を用いた3次元での地形測量の精度をさらに高めるため、地上でより測位精度の高いStatic法によるGNSS測量と、ドローンによるSfM地形測量をあわせて実施し、精度を検証した。その結果、本研究で対象とした里山的景観の水田においては、開けた場所では比較的高い精度で3次元測量が可能であったものの、水田周囲の樹林や山林の陰にあたる部分で、SfMの測位精度が大きく低下することがわかった。一方で新型コロナウィルスの感染拡大により、追加の現地調査とモデルの検証を実施できなかった。今後も引き続き、作成した水田の3次元マップと生物情報を統合し、生物の生息ポテンシャルの予測・評価の精度を高めていく予定である。
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