研究課題/領域番号 |
17K08189
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
塚田 英晴 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (60343969)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アナグマ / 観察資源 / 観察可能性 / センサーカメラ / 非消費的資源 / 野生動物 / 定量的評価 |
研究実績の概要 |
アナグマの観察可能性が高い場所として想定される巣穴の立地条件を昨年度以降に確認された巣穴を加えた46ヶ所を対象に解析した。巣穴の立地条件として、巣穴が立地する斜面の向き、傾斜度との関係を牧場内にランダムに発生させた500点と比較した。その結果、巣穴が開口する方位はランダム点の斜面方位と比べて北向きに有意に偏る傾向があり、シカの採食活動による撹乱が分布に影響したことが示唆された。傾斜度については、ランダム点との間で有意差は認められず、本調査地全体が傾斜地に立地していることが影響したと考えられた。 4頭の成獣アナグマ(♀2頭、♂2頭)にGPS首輪を装着し、15~105日の追跡データを取得した。2頭の♀同士が重複した行動圏をもち、♂間および一部の♂と♀の間では行動圏が比較的排他的に分布しており(平均:101.7ha, レンジ:44-252ha, 最外郭法)、少なくとも本調査地に3家族生息していることが明らかとなった。各家族の行動圏内に2穴1室および1穴2室の2タイプの人工巣穴を各1基ずつ、計6基を設置し、センサーカメラによる利用モニタリングを実施したが、現時点ではアナグマによる利用は確認されなかった。 散策法による野生動物の観察可能性とカメラトラップでの相対撮影頻度との対応関係を検討するため、調査地を500m四方の21のグリッドに分割し、2017年度に取得したデータを集計して両者の関係を解析した。比較的多くのデータが得られたニホンジカを対象に観察努力量あたりの観察率とカメラ稼働日数あたりの相対撮影頻度を算出して比較したところ、両者の間に有意な相関関係は認められなかった(r=0.37, p=0.09)。観察可能性は、観察者がどのような状況下で野生動物と遭遇するかといった条件にも左右されるため、カメラトラップ法による野生動物の生息・滞在確率だけでは予測が困難であったと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった生息環境別の観察可能性については、アナグマを対象に検討が進んでいる。さらに、散策法と観察可能性との比較についても、データ数の多いニホンジカを対象に両者の対応関係を検討することができた。アナグマの観察可能性については、特定の巣穴での撮影頻度と、それ以外の地域での撮影頻度とを比較する予定であるが、これについても複数の巣穴でのカメラトラップによる撮影を開始しており、来年度には取得データによる比較が可能となる予定である。さらに、観察資源価値向上方法として、アナグマ用の人工巣穴をアナグマ家族の行動圏内に6基設置し、利用のモニタリングを開始した。既存の人工巣穴での観察頻度と合わせてデータを蓄積することにより、次年度にはデータの解析が可能となる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、アナグマにGPS首輪を装着し、これらの個体の動きから、人工巣穴設置によるアナグマの移動パターンの変化をモニタリングする予定であった。しかし、GPS首輪装着個体が巣穴に入るとGPSデータが全く入手できず、想定したデータの取得が困難であることがこれまでの調査から明らかとなった。そこで今年度は、巣穴内の滞在場所が先行研究によりモニタリング可能であることが報告されている首輪型VHF発振器を複数のアナグマに装着し、巣穴利用時の移動行動のモニタリングを開始する。このデータがうまく取得できれば、ほぼ、想定した計画通りのデータを揃えることができるため、研究の進展が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予算規模の大きな資材として人工巣穴設置用の資材を計上していたが、当初見込んでいた資材よりも安価で購入できたこともあり、他の調査に必要な資材を拡充することで調整を図った。しかし、この人工巣穴資材の購入および執行が年度末近くとなってしまったため、端数の予算を調整する時間的余裕がなくなった。そこで、翌年の調査費用に使用するべく先送りすることとした。
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