研究課題/領域番号 |
17K08194
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大木 進野 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 教授 (70250420)
|
研究分担者 |
森 正之 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (00320911)
高野 義孝 京都大学, 農学研究科, 教授 (80293918)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 試料調製 / タンパク質 / 相互作用 / NMR |
研究実績の概要 |
独自のBY2タンパク質調製システムを用いてDN3を発現することに成功した。発現したDN3をアフィニティクロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーにて精製する方法を確立した。安定同位体標識を施したNMR試料用のDN3を調製した。これを用いて各種のNMRスペクトルを測定した。DN3単独では安定した立体構造を形成していないことが明らかになった。 大腸菌を利用して植物(シロイヌナズナ)由来のカルモジュリン(CaM)を発現する系を構築した。これを用いてCaMを発現、精製する方法を確立した。精製方法には、既に知られている脊椎動物CaMのものを基本として、幾つかの変更を加えた手順を採用した。安定同位体標識を施したCaMを調製し、各種NMRスペクトルを測定した。NMRシグナルの帰属を進める途中、スペクトル中に小さいピークが現れていることが判明し、試料にマイナーコンフォメーションが存在することを見出した。これはよく知られた脊椎動物由来のCaMと違う点であり、試料条件によってシングルコンフォメーションになるかどうか、pH, 塩の種類と濃度、温度などの各種パラメータを振ってNMRスペクトルを測定している。 CaM結合部位と予測されたDN3断片に相当するペプチドを化学合成した。これのCD(円二色性)スペクトルを測定した。溶媒には、緩衝液のほかTFE(トリフルオロエタノール)を様々な割合で用いた。その結果、ペプチドにはヘリックス形成能があることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌では発現できなかったDN3について、発現と精製する系を確立することができた。初年度でNMRスペクトルを測定する段階まで進めたことで、今後の本研究の道筋をつけることができたと考える。また、これによりDN3単独のときの構造の特徴を初めて明らかにすることができたことは非常に重要な成果である。さらに、その一部に相当する合成ペプチドを用いて、部分的にとりうる立体構造にかかる性質を明らかにすることができたことも大きな成果である。 一方で、植物由来のCaMの調製と解析は順調に進展しているとは言い難い。なぜなら、植物由来CaMのアミノ酸配列は脊椎動物CaMのそれとほぼ同一であるにもかかわらず、脊椎動物CaMのようなクリアなNMRスペクトルが測定でいていないからである。測定試料の条件の問題なのか、数残基の置換による効果なのか、今後見極めたい。 進展が遅れている部分もあるものの、これらの成果をもって、年度末に学会で発表できたことは初年度の研究成果としては十分であろう。以上の理由をもって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
CaMと相互作用しないDN3変異体の設計を行う。設計した変異体を実際に発現するBY2システムを構築する。これを用いて、変異体の調製を行う。野生型と変異体のDN3をCaMに対して滴定する実験を行い、これをNMRでモニターし相互作用を解明する。DN3に対してCaMを滴定する逆の実験も実行し、NMRでモニターする。さらに、DN3ならびにその変異体を植物の葉に接種し、効果を確認する。 表面プラズモン共鳴を用いて、CaMとDN3の相互作用を観測し、結合と解離に関する物理化学的なパラメータを求める。 植物CaM単独の際のマイナーコンフォメーション問題を解決する。精製方法の見直し、NMR測定時の温度変化、緩和時間実験などを行い、何に起因する現象なのか解明する。必要があれば、他のアイソフォームの発現系も構築して現象を確認する。 CDを用いてCaMに対して合成ペプチドの滴定実験を行う。この結果から、複合体形成時にどのような構造変化が起こるのかを解析する。
|