植物病原菌は感染を成立させるため、エフェクターと呼ばれる各種分泌タンパク質を駆使して宿主植物の生体防御系を攪乱・抑制する。本研究の目的は、ウリ科植物に感染するColletotrichum orbiculare由来エフェクタータンパク質DN3の構造と機能の解明である。DN3は、感染拡大を阻止するために植物が示す防御応答反応を抑制してしまう性質を有している。 具体的には、研究期間中に以下のことを行った。特に最後の項目(v)は、最終年度に行った実験である。(i) DN3の大量発現系を植物培養細胞ならびに大腸菌のシステムを駆使して構築した。さらに、その精製方法を確立した。(ii) DN3のアミノ酸配列をバイオインフォマティクス技法を用いて解析し、DN3がカルシウム結合タンパク質カルモジュリン(CaM)と結合することを予測した。(iii) 精製した15N安定同位体標識DN3のNMRスペクトルを測定し、DN3が天然変性タンパク質であることを発見した。(iv) NMRを用いてDN3がCaMとカルシウム依存的に結合することを実験的に証明することが出来た。(v) DN3の変異体を用いて、DN3のC末端側がCaMと結合することをin vitroの実験で示した。さらに、DN3とCaMの結合がDN3の機能発現にとって重要であることを、植物体を用いた実験で示すことに成功した。 DN3-CaM複合体がさらなる標的と結合する可能性を模索するべく、広く標的探索を実施する準備を開始した。この研究は、令和2年度からの採択が決定した新しい科研費の課題として引き続き実施する。
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