研究課題
本申請課題では,FNG生成に関与する酵素群の遺伝子発現制御を通して, ① FNGの植物の分化・成長に関わる生理機能を実証するとともに,② その機能の植物成長(或いは果実熟成)制御への応用を目的とした基盤技術開発を目指している。平成30年度は,(1) FNG 生成に関与するaPNGase の過剰発現トマトについて,T2 世代の果実成熟促進の再現性を調査した。その結果,T2世代の aPNGase 遺伝子の過剰発現は維持されており,異なる果実成熟検定法を用いても再現性良く果実成熟促進(コントロールに比べて2日間)が確認された。この結果は,aPNGase 活性促進あるいはその生成物である遊離糖鎖が果実成熟促進に関与するという我々の仮説を支持するものであった。(2) aPNGase活性の組織分布を解析した結果,葉部に強い活性が認められる一方,果実中の酵素活性が弱いことから,葉部で生成した遊離糖鎖が果実に移動する可能性が考えられた。(3) そこで,トマト導管液中の FNGs 存在について解析したところ,導管液中に植物複合型糖鎖が存在することを世界に先駆けて発見した。更に,FNGs分解に関わる数種のグリコシダーゼが存在することを明らかにした。 次いで,小胞体関連分解 (ERAD)で生成するFNGsの機能解明の一環として, (4) cPNGase 及び ENGase 遺伝子の発現を完全抑制した Arabidopsis thaliana の構築を完了した。表現型については野生型植物と顕著な差異が認められなかったが,cPNGase/ENGase 活性の消失にも関わらずGN2型ハイマンノース型糖鎖 (GN2-HMT) が生成することを見出し,小胞体中のオリゴ糖転移酵素の副生成物としてGN2-HMTが生成することを明らかにした。これらの結果は,aPNGase, cPNGase, ENGase 活性を完全抑制してもFNGsの生成機構が存在することを示しており, FNGsの生理機能機能には,糖鎖遊離酵素の過剰発現株の構築が有用であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
(1)FNG 生成に関与するaPNGase の過剰発現トマトについて,T2 世代の果実成熟促進の再現性を調査した。その結果,T2世代の aPNGase 遺伝子の過剰発現は維持されており,異なる果実成熟検定法を用いても再現性良く果実成熟促進(コントロールに比べて2日間)が確認された。この結果は,aPNGase 活性促進あるいはその生成物である遊離糖鎖が果実成熟促進に関与するという我々の仮説を支持するものであった。(2)aPNGase活性の組織分布を解析した結果,葉部に強い活性が認められる一方,果実中の酵素活性が弱いことから,葉部で生成した遊離糖鎖が果実に移動する可能性が考えられた。そこで,トマト導管液中の FNGs 存在について解析したところ,導管液中に植物複合型糖鎖が存在することを世界に先駆けて発見した。更に,FNGs分解に関わる数種のグリコシダーゼが存在することを明らかにした。(3)cPNGase 及び ENGase 遺伝子の発現を完全抑制した Arabidopsis thaliana の構築を完了した。表現型については野生型植物と顕著な差異が認められなかったが,cPNGase/ENGase 活性の消失にも関わらずGN2型ハイマンノース型糖鎖 (GN2-HMT) が生成することを見出し,小胞体中のオリゴ糖転移酵素の副生成物としてGN2-HMTが生成することを明らかにした。これらの結果は,aPNGase, cPNGase, ENGase 活性を完全抑制してもFNGsの生成機構が存在することを示しており, FNGsの生理機能機能には,糖鎖遊離酵素の過剰発現株の構築が有用であることが明らかになった。
(1)過剰発現させたaPNGase Leが継代育種により転写後サプレッションを受けていることが明らかになったことから,遊離N-グリカンの果実成熟促進活性が支持された。そこで,遊離N-グリカンの受容体の探索を行う。細胞膜での存在が推定されているlegume型レクチン様レセプターキナーゼに焦点を当て遺伝子同定及び異種発現系構築を目指す。(2)cPNGase/ENGase 二重欠損株(Arabidopsis thaliana)の構築に世界に先駆けて成功し,一昨年度には2種aPNGase欠損株を構築してる。これらの変異株では,顕著な表現系の違いが認められなったが,環境ストレス下での生育についての解析を行っていないので,種々環境ストレス下での表現型解析を行う。一方,cPNGase/ENGaseは小胞体中でのタンパク質品質管理系 (ERAD) に関与しているので,二重欠損がERAD 機構に及ぼす影響を解析する。(3)cPNGase/ENGase 遺伝子についても,aPNGase と同様に過剰発現植物(トマト,A.thaliana)の構築を行うことで,遊離N-グリカンの生理機能解析を継続する。3種遺伝子の過剰発現構築には,ゲノム編集技術によるノックインを行う計画である。(4)導管液中に検出された遊離N-グリカン分解に関与するβ-Gal’ase, β-Xyl’ase, α-Fuc’ase ,α-Man’ase 遺伝子についても,遊離N-グリカンの生理機能解明の一端として発現制御植物の構築を開始する。なお,これらの酵素遺伝子については,既に同定を完了している。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 83 ページ: 印刷中
10.1080/09168451.2019.1608803
巻: 82 ページ: 1172-1175
10.1080/09168451.2018.1459464
Biochem. J.
巻: 475 ページ: 305-317
10.1007/s10719-016-9758-z
J. Biochem.
巻: 164 ページ: 53-63
10.1093/jb/mvy029