研究課題/領域番号 |
17K08199
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
山口 泰華 熊本保健科学大学, 保健科学部, 研究員 (90448522)
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研究分担者 |
田中 聡 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (10321944)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物 / 寄生性線虫 |
研究実績の概要 |
植物寄生性線虫は植物の根に入り込み、エフェクタータンパク質と呼ばれる因子を植物細胞に吐きかけて、植物細胞を栄養豊かな多核細胞へと誘導する。研究代表者は、これまでにこの多核細胞を用いたRNAシーケンス解析から、多核細胞が幹細胞の性質をもつことを解明した。本実験計画では、i)植物寄生性線虫の寄生機構の解明のため、線虫遺伝子を破壊できるsg-RNAを発現する植物の作出と、ii)線虫の誘導する幹細胞系植物細胞(多核細胞)の細胞系譜解析法の構築を行う事を目指した。 これらの研究成果があげられれば、農業分野において、線虫の食害を抑制できる新規のコンパニオンプランツを作出することが可能になる。 本実験計画では、平成29年度から、線虫の生存に必要な遺伝子の同定とその遺伝子のsg-RNAを発現する植物の作出を進め、さらに線虫の誘導する多核細胞の細胞系譜解析法の構築を行うための準備を始める計画であった。しかし、平成29年5月より熊本大学理学部から熊本保健科学大学の保健科学部に移転したため、 まずは申請者が一人で線虫や植物の維持を行うことが必要となった。平成30年度は、初年度より構築を行ってきた線虫を回収システムの改良を行った。 また、本計画のii)多核細胞誘導のライブイメージング法の構築を遂行するためのエフェクタータンパク質を検出する抗体を外部発注した。 しかし得られた抗体の力価を評価したところ、本研究課題の遂行には不十分であった。そこで、タグ付きのエフェクタータンパク質を発現する遺伝子改変線虫の作成を新たに計画した。また、ライブイメージング法を使わずに、寄生後の植物側の反応を組織学的に解析するため、他研究室では手付かずの線虫の寄生した宿主根を用いたwhole mount in situ hybridization法の開発を予定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本計画の線虫の誘導する多核細胞の細胞系譜解析法の構築を遂行するには、線虫の吐き出すエフェクタータンパク質を植物内で検出する必要があったが、その実験に必要な抗体の力価が不十分であったため、タグ付きの16D10を発現する遺伝子改変線虫の作成へと計画変更を余儀なくされた。 一方で研究目的を達成するために同時進行で、ライブイメージング法を使わずにこの多核細胞の細胞系譜解析をする方法を構築することを目指して、線虫の寄生した宿主根を用いたwhole mount in situ hybridization法を行い、植物側の遺伝子のmRNAの発現によって組織学的な解析することを計画して進めていた。しかし感染した根は腐敗しやすく、組織の大きさも揃わないためにサンプルとしての扱いが困難であったため計画を中止した。 そこで、植物幹細胞マーカー遺伝子の発現に伴いGFP等の蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変植物を作成して、多核細胞の発現するマーカー遺伝子を蛍光観察によってライブイメージングする方法を計画し、実行中である。以上のように、多核細胞の細胞系譜解析の進捗状況は遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ii)線虫の誘導する幹細胞系植物細胞(多核細胞)の細胞系譜解析法の構築については、多核細胞の発現するマーカー遺伝子を蛍光観察によってライブイメージングする方法の確立に向けて研究を推進する。一方で、i)線虫遺伝子を破壊できるsg-RNAを発現する植物の作出を続ける予定である。 現在、本大学では感染拡大防止対策のため、十分な研究活動を行えるかが不透明ではあるが、可能な限り研究活動を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、平成29年5月より熊本大学理学部から熊本保健科学大学の保健科学部に移転したため、当初予定していた実験にすぐには着手することができなかった。また、抗体の作成を外部注文したが、解析に使えるほどの十分な力価を得られず、当初の計画を変更して研究目標の達成を目指している。現在、本大学では感染拡大防止対策のため、研究活動を自粛しており、今後は十分な研究活動を行えるかが不透明ではあるが、可能な限り研究活動を進めていく予定である。以上の状況から、上記実験計画は次年度以降にずれ込んで実施することにした。
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