植物寄生性線虫は植物の根に入り込み、エフェクタータンパク質と呼ばれる因子を植物細胞に吐きかけて、植物細胞を栄養豊かな多核細胞へと誘導する。本研究代表者は、これまでに、この多核細胞を用いたRNAシーケンス解析から、多核細胞が幹細胞の性質をもつことを解明した。 本実験計画では、i)植物寄生性線虫の寄生機構の解明のため、線虫遺伝子を破壊できるsg-RNAを発現する植物の作出と、ii)線虫の誘導する幹細胞系植物細胞(多核細胞)の細胞系譜解析法の構築を行う事をめざした。しかし、本研究代表者は、初年度に熊本保健科学大学に移転したため、線虫や植物の維持を申請者のみで行うことが必要となり、当初の計画を変更する必要が生じた。ここまでの成果については、日本発生生物学会年会において発表を行った。翌年度は、まず線虫の小規模回収システムを構築完了した。しかし、本計画のii)のライブイメージング法の構築を遂行するために外注した抗体は、本研究課題の遂行には不十分な出来であった。しかし、ただ単に蛍光物質を体内に取り込ませた線虫の植物内での寄生の様子をライブイメージングでの観察に成功したので、実験計画を一部変更して、タグ付きのエフェクタータンパク質を発現する遺伝子改変線虫の作成を新たに計画して進めた。一方で、研究代表者は組織内のRNAの所在を検出するwhole mount in situ hybridization法(WISH法)に長けているので、ライブイメージング法のみに頼らずに、寄生後の植物側の反応を組織学的に解析するため線虫の寄生した宿主根を用いたWISH法の構築にも挑んだ。 以上のように、本研究計画を遂行するために実験計画の変更を行い、部分的には研究成果を挙げてきたが、投稿論文については執筆中であり投稿完了まで至っていない。
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