研究課題
近年の医薬リード化合物の枯渇問題を受け、特異かつ複雑な骨格を有する生物活性天然物に注目が集まっている。しかし、高度に官能基化した天然物の合成は、現代の精密有機化学をもってしても容易ではなく、目的化合物の満足のいく量的供給や構造活性相関研究を視野に入れた誘導体合成は困難である。このような背景のもと、本研究課題では、高機能性金属触媒を用いたタンデム触媒反応や高活性金属触媒を用いた酸素酸化触媒反応の開発を基盤とし、高次構造多環性アルカロイドの革新的全合成に取り組んでいる。1)「遷移金属触媒の動的制御に基づいたアシスト型タンデム触媒反応の開発とその応用」において、本年度は以下の成果を得た。前年度までに酸素を化学因子とするGrubbs触媒を用いた新たなアシスト型タンデム反応の開発に成功し、様々な含窒素複素芳香族化合物の合成へと応用した。本年度はReact-IRやNMRなどの分析法を用い、新規開発したタンデム触媒反応の反応系中における触媒の構造変化を追跡した。その結果、酸素雰囲気下、加熱によってGrubbs触媒がRu-CO錯体と変化し、その生じたRu-CO錯体がアミンの酸素酸化における活性種であることを新たに見出した。2) 「アミノ酸由来二量体型生物活性天然物の高収束的全合成」において、本年度は以下の成果を得た。前年度までに、鉄フタロシアニンを用いたインドールの酸素酸化による触媒的二量化反応を新たに開発し、さまざまな天然物の収束全合成を達成している。本年度は、確立したインドールの酸化的二量化反応を、トリプトファンと生体を構成する様々なアミノ酸からなるペプチドや生理活性ペプチドへ適用した。その結果、独自に開発した方法論は天然物合成への適用にとどまらず、ペプチドの有機合成化学を用いた酸化的修飾法にも応用可能であること見出し、その汎用性の拡大に成功した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~seizou/index.html