研究課題
ルイス塩基を用いる「ハロゲン種の活性化」について昨年度に引き続き検討した。具体的には、ベンズイソセレナゾロン骨格を持つC2対称な分子を設計し、芳香化合物の位置選択的ハロゲン化及びエンカルボン酸のエナンチオ選択的ハロラクトン化反応について検討した。なお、ベンズイソセレナゾロン骨格は医薬品であるエブセレン(抗炎症性抗酸化薬)としても用いられている骨格である。昨年の検討で、アニリンを基質とした場合には触媒非存在下と比べ反応が促進されるのに対し、フェノールを基質とした場合には触媒非存在下と比べ収率が低下することを見出していたが、本予備検討をもとに詳細に検討した。その結果、触媒非存在下では、アニリンのブロモ化ではオルトブロモ体とパラブロモ体の混合物(1:4)で得られるのに対し、触媒存在下ではパラ位選択的にブロモ体を与えることが分かった(<1:20)。一方で、アニソールやフェノール基質とした際には触媒存在下、触媒非存在下に関わらずパラ位選択的にブロモ体を与えた。これはアニリンの塩基性が選択性に関与している可能性を示唆している。一方、他の基質として、ピリジン、安息香酸、塩化ベンゼン、ヨウ化ベンゼン等他の置換ベンゼンについても検討したが、反応は全く進行しなかった。ベンズイソセレナゾロン骨格を持つ化合物の触媒活性自体は強くないことが分かった。また、エンカルボン酸のエナンチオ選択的ブロモラクトン化反応について検討した。その結果、若干の不斉が誘起(5%ee)されるにとどまり、今回設計した分子は不斉ブロモラクトン化反応には適用できないことが分かった。
3: やや遅れている
本申請研究では、アルケンの「エナンチオ選択的」ハロ官能基化と、インドールなど芳香族化合物の「位置選択的」ハロゲン化の新手法を開発することを目的に研究を行っているが、分子間不斉ハロ官能基化反応について良好な結果が得られておらず、研究全体としては当初目標からやや遅れている。
セレン触媒について、芳香族化合物の「位置選択的」については、アニリン等の塩基性官能基を有する化合物について良好な結果を得つつあるので、類似化合物について系統的な検討を進める。一方、分子間ハロ官能基化については予定より検討が遅れているが、当初の研究計画に基づいて検討を進める予定である。
現在までの進捗状況に示したように、分子間ハロ官能基化反応において当初予定した成果が得られていない。そのため、試薬(一般性の検討用)の費用などが当初の予定を下回っていいる。今年度請求分により、反応開発用の研究費を確保し、研究を加速させる予定である。
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