研究実績の概要 |
求電子剤を用いるオレフィンの官能基化と同様に、シクロプロパンの官能基化も重要な変換反応である。これらの反応では通常シクロプロパン環が開環し、合成シントンとして有用な1,3-官能基化化合物を与えるため、シクロプロパンを基質とするハロ官能基化反応が近年研究されるようになってきた。 本年度は、シンプルなアリールシクロプロパンの1,3-官能基化反応について、ハロゲン種に加え様々な求電子剤を用いて検討した。その結果、アリールシクロプロパンに電子豊富芳香族化合物共存下ルイス酸であるホウ素化合物を作用させると、1,3-アリールホウ素化化合物が得られることを見出した。活性化されていないシクロプロパンの1,3-アリールホウ素化はこれまでに報告例がなく興味深い知見である。本研究課題の主なテーマであるハロゲン化とは異なるが、導入されるホウ素官能基はハロゲン基と同様官能基化の足掛かりとして有用であるため、本反応について詳細に検討した。 その結果、ジクロロメタン溶媒中で三塩化ホウ素を用いることで首尾よくアリールシクロプロパンの1,3-アリールホウ素化が進行することを見出した。一般性について検討し、さまざまな基質、求核種(芳香族化合物)に適用することに成功した。さらに、1,3-アリールホウ素化では生成物をピナコールボランとして単離しているが、反応系中でホウ素官能基を、酸化剤や字度化合物と反応させることで、アルコールやアミン化合物を得ることにも成功した。これらは形式的ではあるが不活性シクロプロパンの1,3-オキシアリール化、1,3-アミノアリール化とみなすことができる有用な変換である。
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