研究実績の概要 |
令和元年度、求電子剤を用いるシクロプロパンの官能基化について検討し、電子豊富芳香環化合物共存下に三塩化ホウ素を作用させると、アリールシクロプロパンの1,3-アリールホウ素化が進行することを見出した。ホウ素官能基はハロゲン基と同様官能基化の足掛かりとして有用であるため、令和元年に実施した基質一般性について拡充するとともに、1,3-オキシアリール化、1,3-アミノアリール化条件も精査し、不活性シクロプロパン1,3-官能基化法として確立した。本内容は、RSC Advance 誌に掲載された。 また、海面由来のセスタテルペノイドであるansellone Aの全合成に取り組んだ。本化合物の合成終盤において、アセトキシ基のアリル位への導入が課題となった。本変換を、ブロモ化剤を用いるブロモアセトキシ基化反応と、続くHBrの脱離による2段階の反応によって達成した。この際に、ブロモアセトキシ基化反応はマルコフニコフ則とは逆の選択性が要求され、反応の位置選択性が問題となった。種々のルイス塩基触媒、無期塩基、酸触媒等を検討の結果、酢酸/四塩化炭素溶媒中、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン共存下にN-ブロモスクシンイミドで処理すると中程度の選択性でブロモアセトキシ基化反応が進行することが明らかとなり、これにより天然有機化合物ansellone Aの合成を達成した。本天然有機化合物の合成は、単純なブロモアセトキシ基化反応においても位置選択性の制御が難しいことを示す実例であり、今後一般的な手法開発へと展開する予定である。なお、ansellone Aの合成は、Org. Lett.誌に掲載された。
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