研究課題/領域番号 |
17K08211
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
神野 伸一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20537237)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アミノベンゾピラノキサンテン系色素 / アクチベータブル分子 / pH |
研究実績の概要 |
観測したいpH で光シグナルがOFF からON へ変化するアクチベータブル分子は、生体内の標的組織や細胞の特異的なpH を認識して可視化する分子プローブとして利用されている。しかし、一般的なturn-on 型アクチベータブル分子は、pH を特異的にセンシングできる反面、連続的に変化するpH を計測することは難しい。単一分子でマルチカラー応答性を有するアミノベンゾピラノキサンテン系 (ABPX) 色素を母核とするpH応答型アクチベータブル分子とライブセル・マッピング計測技術に向けて、スピロエーテル (SE) 環を有する ABPX-SE (1) が、pH に応答して分子構造と色が段階的に変化することを見出した。一方、pH によるSE 環の開閉環平衡の制御はできておらず、本色素をアクチベータブル分子として応用する上で課題となっていた。そこで、pHに対するABPX-SE の構造とSE環の開閉環平衡の関係の解明を目的とし、キサンテン環の窒素部位を構造改変したABPX-SE誘導体を新たに合成し、pH応答性を精査した。色素構造とSE環の開閉環平衡の関係の解明に向けて、電子供与能が異なる置換基を有するABPX-SE 誘導体 6種を新たに合成し、pH応答性を調べた。その結果、キサンテン環の窒素部位の電子供与性が大きいと生成する有色のカチオン体が安定となるため、SE環が開環する方向へ反応が進行する一方で、電子供与性が小さいと生成する有色のカチオン体が不安定であるため、閉環体が生成する方向へ反応が進行することがわかった。このように、キサンテン環の窒素部位に電子供与性が小さい置換基を導入することは、pH に応じてSE環が二段階に開環する上で有効となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、連続したpH をマルチカラーセンシングできる新たなアクチベータブルプローブを開発することに成功した (JOC、Heterocycles掲載)。また色素構造とpH応答性の関係を構造有機化学な手法により明らかにし、pHの変化による発色性や蛍光性の制御の向けた有用な知見を得ることができた。更に、スピロ環部位の構造改変の過程で、近赤外光発光化合物が新規に生成することを見いだした(特願2018-162404)。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、「1分子で多彩な光と色を創る、操る、使う」 としたコンセプトのもと、新色素骨格のアミノベンゾピラノキサンテン系 (ABPX) の開発に取り組んできた。これまで、pHで分子を「操る」、「使う」 分子技術の新たな知見と方策を得ることができた一方、フルカラー・マッピングに向けた蛍光団の「一分子RGB化」は達成できていない。そこで本年度は、従来の合成法では不可能であった蛍光団が非対称構造をもつABPXの合成法を新たに開発し、一分子R・G・B 蛍光を示す誘導体を創製する。具体的には、ロドール系とインドール系骨格が組み合わさった蛍光団を母核構造とし、構築した合成法を用いて、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどを系統的に導入した非対称のABPX誘導体を合成し、モノカチオン型構造の緑色蛍光化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定通りに前年度の研究を終えることができたが、前年度は、pHに対する応答性の解明に向けた研究を重点的に行い、非対称型構造を有するABPXの新規合成法の検討は行わなかった。従って次年度に、該当する実験項目を着手する予定である.
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