研究代表者は,ローダミンが二分子縮合したアミノベンゾピラノキサンテン系 (ABPX) 色素を母核としたアクチベータブル分子の合成と機能創出に取り組んできた。本研究を通じて以下の3つの新たな成果を得ることができた。 [1] pHにより構造と色が2段階に変化するアクチベータブル分子の創出: 発色団のキサンテン環の窒素部位に,電子供与性が小さなモルフォリンを導入したABPXが,pHに応答して,構造と色が2段階に変化することを見いだした。そして本分子が pH勾配をマルチカラーセンシングできる新たなアクチベータブル分子となることを明らかとした。 [2] 光と化学的刺激に対しRGB蛍光色を示すアクチベータブル分子の創出: 外部刺激に応答して光物性が変化する応答性分子は分子スイッチとして生命科学や機能性物質科学などの分野で注目されている一方,外部刺激に対して三つの状態を変換可能な分子は,応答部位の構造変換を制御することが困難なためほとんど報告がない。今回,応答部位である二つのスピロ環が閉環したABPXの刺激応答性を調べる中で,光の照射によりスピロ環の一つが選択的に開環し,青緑色から黄色に蛍光色が変化することを見出した。さらに光照射で生成した開環体に有機酸を加えることで二つのスピロ環が開環した赤色蛍光体が生成することを見出した。 [3] 可視域から近赤外域に蛍光波長が切り替わるアクチベータブル分子の創出: ABPXの誘導化において,ABPXとCH3MgBr などの種々の求核剤が反応することで,インドシアニングリーンに代表されるシアニン系色素が縮環した構造体が生成する反応を新たに見いだし,本色素が遠赤色から近赤外光を強く吸収・発光することを発見した。そして,可視域と人の目では見えない近赤外域の間で蛍光波長を切り替え可能な分子を開発した。
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