研究課題/領域番号 |
17K08221
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
田村 修 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (30257141)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 2-チオピリジル基 / カルバマート化剤 / N-Boc ニトロン / 分子内付加環化反応 / O-置換α,β-不飽和オキシム / エポキシ化 / ジメチルジオキシラン / 開裂反応 |
研究実績の概要 |
Ⅰ オキシム窒素の非共有電子対をアシル化することにより活性化して、N-アシルニトロンを反応中間体とする反応開発 平成28年度までに、2-チオピリジル基 (PyS) を脱離基とするカルバマート化剤 PySCO2t-Bu が分子内にオレフィンを有するオキシムHO-N=CH-CH2-X-CH2-CH=CHRの窒素原子をtert-ブチルオキシカルボニル化t-BuOCO化(Boc化)し、系内でN-Boc ニトロン-O-N+(Boc)=CH-CH2-X-CH2-CH=CHRを生成して分子内付加環化反応を起こし、ビシクロ[3.3.0]型化合物を与えることを見いだしていた。そこで平成29年度では、(1) Boc以外の保護基化剤の検討を行った結果、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基(Teoc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)などがBoc基と同様に使用できることが明らかとなった。 Ⅱ O-置換α,β-不飽和オキシムの合成法の開発 O-シリル-α,β-不飽和オキシムの合成法は殆ど知られていなかった。そこでまず、その合成法を検討した。その結果、シクロペテノンにO-TBDPSヒドロキシルアミンをジクロロメタン中室温で反応させると対応するO-シリルオキシムが中程度の収率で得られることを見いだした。また、O-ベンジル-α,β-不飽和オキシムも合成できた。 Ⅲ O-置換α,β-不飽和オキシムの窒素原子のβ位における求電子型反応の開発 シクロペンテノンのO-ベンジル-α,β-不飽和オキシムを用いて検討した。その結果、ジメチルジオキシランによるエポキシ化でO-ベンジル-5-7員環シクロアルケノンオキシムが高収率でエポキシ体を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅰ オキシム窒素の非共有電子対をアシル化することにより活性化して、N-アシルニトロンを反応中間体とする反応開発 分子内にオレフィンを有するオキシムHO-N=CH-CH2-X-CH2-CH=CHRに各種カルバマート化剤PySCO2Rを用いて反応を行うと系内でN-アルコキシカルボニルニトロン-O-N+(CO2R)=CH-CH2-X-CH2-CH=CHRを生成して分子内付加環化反応を起こし、ビシクロ[3.3.0]型化合物を与えることを見いだした。カルバマートとしては、Cbz、Teoc、Fmoc、Troc、Allocなどを使用することができることを明らかにしたことは大きな進歩である。 Ⅱ O-置換α,β-不飽和オキシムの合成法の開発 シクロアルケノンにO-TBDPSヒドロキシルアミンを反応させることにより対応するO-シリルオキシムが得られることを見いだした。また、同様な方法でO-ベンジル-α,β-不飽和オキシムも合成できることを明らかにした。 Ⅲ O-置換α,β-不飽和オキシムの窒素原子のβ位における求電子型反応の開発 上で得られたO-置換α,β-不飽和オキシムにジメチルジオキシランを反応させると高収率でエポキシ体が生成することを明らかにした。さらに,得られたエポキシ体をSnCl4と反応させるとα-クロロ-β-ヒドロキシオキシムが得られることも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ オキシム窒素の非共有電子対をアシル化することにより活性化して、N-アシルニトロンを反応中間体とする反応開発 平成29年度迄は、鎖状の基質の検討を行ってきた。平成30年度では、側鎖に環状構造を組込んだ系の付加環化反応を検討し、適用範囲の拡大を図る。導入する環の大きさ、環の数、二重結合の位置によって多様な多環系化合物を合成できる。この反応を利用すると極最近発表された天然物cononuridine の合成研究も開始する。また、既に分子内付加環化反応にて第四級炭素の構築に成功していることから、スピロ化合物の合成も検討する。 Boc 以外のカルバマート系保護基が利用できたことから、光学活性なカルバマート化剤PyS-CO2R*を用いてジアステレオ選択的な付加環化反応を行う。 Ⅱ O-置換α,β-不飽和オキシムを電子供与性を活かす反応開発 平成29年度で、O-置換α,β-不飽和オキシムがジメチルジオキシランでエポキシ化されることを明らかにした。そこで、Shi不斉エポキシ化を行い、その不斉誘導率を調べる。また、O-置換α,β-不飽和オキシムを電子供与性ジエノフィルと見なし、逆電子要請型のDiels-Alder反応を試みる。
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