研究実績の概要 |
今年度は前年度までのアミジオールの合成研究の知見を生かして、アミジオールと共通の部分構造を有するジテルペノイド イソリネアロールの合成研究を主に行なった。その結果、イソリネアロールのラセミ全合成および不斉全合成を達成した。以下にその詳細を記す。2-ブテニル-2-メチル-シクロヘキサン-1,3-ジオンの還元的非対称化により対応するケトアルコールを高立体選択的に得た後、ケトン部位にメタアリル基を立体選択的に導入するため、アルコール部位を足がかりとしてシリル架橋を構築した。その後、シリル架橋を有するケトン誘導体に対して、メタアリルGrignard 試薬を作用させ、イソリネアロール合成の鍵となる三連続不斉中心の構築に成功した。その後玉尾酸化と閉環メタセシス反応により7員環部を構築し、二環性化合物とした。合成した化合物の二重結合部位に対して、位置選択的なヒドロホウ素化-酸化反応と続くパリック-デーリング酸化によりケトン体へと導いた。そのケトン体をシリルエノールエーテルへと変換した後、立体選択的なアリル基導入により、第四級不斉炭素原子を構築することに成功した。その後シクロヘキサン上のエキソメチレンの構築を行なった後、導入したアリル基を基に側鎖部位の構築を行なった。最後に保護基の除去に伴う、ヘミアセタール部位の構築により、イソリネアロールのラセミ全合成を達成した。また、不斉全合成を達成するため、2-ブテニル-2-メチル-シクロヘキサン-1,3-ジオンの還元的非対称化をCBS還元を用いて行なったところ、目的のケトアルコールを、高エナンチオ、および高ジアステレオ選択的に得ることに成功した。その後ラセミ全合成の経路を踏襲し、イソリネアロールの不斉全合成を達した。今後はこのイソリネアロールの合成によって得られた知見をアミジオールおよびその類縁体の合成へと利用していく予定である。
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