研究実績の概要 |
本研究は,① 一般式(RfSO2)2CHRで表される超強酸性炭素酸(Rf = ペルフルオロアルキル)の合成法の開発と,② それらから導かれる極安定カルボアニオンの構造化学的解析を行うものである。以下,本年度の成果概要を示す。 ① については,すでに複素環式芳香族化合物に対する2,2-ビス(トリフリル)エチル化反応の開発に成功している。本年度は,前年度の検討結果を踏まえて,アルキンおよびアレンに対する2,2-ビス(トリフリル)エチル化反応を検討した。その結果,分子内にインドール構造を備えたアルキンとTf2C=CH2との反応では,2,2-ビス(トリフリル)エチル化に伴って分子内Friedel-Crafts型反応が進行することを見いだした。これは,複雑なカルバゾール構造を備えた超強酸性炭素酸の合成を実現するものである。また,アレンとの反応ではユニークなα,β-不飽和ケトンが得られた。 ② に沿う研究として,一般式 (RfSO2)2C=C(NHR)2 で表されるpush-pullアルケンの合成と回折結晶学的手法による炭素-炭素二重結合の結合状態の解析を行った。R = i-Prの化合物では,結晶中において,炭素-炭素二重結合周りの大きなねじれがあった。一方で,R = Arの場合,結合まわりの大きなねじれは見られなかった。両者について,X線結晶構造解析を進め,得られた電子密度情報に基づく結合解析を進めた。その結果,ねじれの大きなジイソプロピル体(R = i-Pr)は,高度に電荷分離した「カルベニウムイリド」と呼ぶべき化合物であることを明らかにした。また,ジアリール体(R = Ar)では,電荷分離した共鳴構造の寄与が際立って大きいものの,依然としてπ結合を伴う共鳴構造が主たる寄与構造であった。
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