有機化学において,カルボアニオンは一般に不安定で反応性の高い化学種とされている。一方で,研究代表者は「超強酸性炭素酸」を求める研究の途上,単離可能なカルボアニオン含有塩を見いだした。本研究では,この極安定カルボアニオンに焦点をあて,有機分子にカルボアニオン置換基を導入する手法の開発と,得られた化合物の精緻な構造化学研究を進めた。双性イオン構造をもつ窒素およびリンベタインを合成し,[Tf2CR]-型カルボアニオンの極めて低い反応性を示した。また,Tf2C=C(NHR)2型push-pullエチレンを合成し,それらの分極した炭素-炭素結合について,理論・実験両面から結合状態を解析した。
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