研究課題/領域番号 |
17K08226
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
齋藤 望 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80349258)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キラル合成素子 / ルテニウム / 環化二量化 / アンモニウム塩 / 相間移動触媒 / 不斉アルキル化 |
研究実績の概要 |
当該年度はC2対象反応素子として使用する母骨格である、ジアルキリデンペンタシクロテトラデカン骨格の光学活性体としての合成方法を確立するとともに、分子内に2つの窒素原子を有する4,13-ジアザ体を光学純品で合成する経路の検討を行った。合成法としてはまず、アレンとアルキンを繋ぐリンカー部にその後の脱保護が容易なp-ノシル基を持つ1,7-アレンインを高純度の光学活性体として合成することにした。それらはプロパルギルアミン部位と光学活性なアレニルアルコール誘導体のカップリング反応で合成することにし、光学活性なアレニルアルコールは前駆体であるイノンの野依不斉還元を利用することで合成した。合成したアレンインの環化二量化反応は円滑に進行し、対応する5環式化合物を良好な収率で、光学活性体として合成することができた。その後、数工程の分子変換を進めた結果、ほぼ目的とする4,13-ジアザペンタシクロテトラデカン誘導体をほぼ工学純品として調整することに成功した。さらにそのジアザ体をプラットフォームとしたキラル反応素子のデザインを行い、N,N,N,N-テトラアルキル体である、ビス第四級アンモニム塩の合成を行った。本化合物の有機合成への利用研究として、本年度はグリシンシッフ塩基の不斉アルキル化における、キラル相間移動触媒としての機能検証を行った。すなわち、窒素原子上の置換基として様々なアルキル基を導入したビスアンモニウム塩を系統的に合成し不斉反応へ用いたところ、30%ee程度ではあるが、不斉反応素子として利用できることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にも記載したとおり、当該年度の目標の1つはは分子内に2つの窒素原子を有する、4,13-ジアザペンタシクロテトラデカン骨格の不斉合成法の確立である。N,N,N,N-テトラアルキル体である、ビス第四級アンモニム塩の合成を行った。本化合物の有機合成への利用研究として、本年度はグリシンシッフ塩基の不斉アルキル化における、キラル相間移動触媒としての機能検証を行った。すなわち、窒素原子上の置換基として様々なアルキル基を導入したビスアンモニウム塩を系統的に合成し不斉反応へ用いたところ、30%ee程度ではあるが、不斉反応素子として利用できることを明らかにすることができた。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は前年度で得られた合成法に関する知見を基に、新しいキラル反応素子の開発研究を進める予定である。まずは、前年度行ったビス第四級アンモニウム塩の不斉相間移動触媒としての機能強化のため、さらに誘導体を合成し評価を行う予定である。次に、上記アンモニウム塩の合成中間体であるビス第三級アミンをプラットフォームとして、新しいビスアミンオキシド配位子を設計する。窒素原子上の置換基を様々に検討することにより、多様な配位子が簡便に合成できると考えている。合成したアミンオキシドは、アリルシランを用いたカルボニル化合物の不斉アリル化をベンチマーク反応として利用することにし、不斉反応素子としての機能評価を進める予定である。さらに、本アミンオキシドの酸化剤としての利用も検討する。特に不飽和カルボニル化合物の不斉エポキシ化反応をモデル反応として、不斉酸化剤としての機能評価を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は比較的高額な有機合成試薬と、分析用キラルHPLCカラムを複数本購入する予定であった。当該年度の研究を遂行途中において、より安価な試薬を用いた合成経路を新たに立案するに至り、当該年度にはその新しい経路による合成法の確立に向けた検討を主に進めていたので、計画よりも金額が少なくなることになった。またキラルカラムについても上記の合成法の検討に比較的時間を費やす結果となったため、当該年度中には購入を見送った。これらを踏まえ、次年度は当初予定した合成計画に基づいた化合物の合成を進めることにし、そのために次年度に繰り越した助成金も用いて、試薬やキラルカラム等の購入予算に充当することを考えている。
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