糖鎖医薬品や天然由来の生理活性配糖体を簡便かつ効率的に合成できるグリコシル化反応の開発は、有機合成上の重要なテーマである。近年の糖鎖合成において、チオグリコシドは、そのC-S結合が保護基となり得る一方で、反応剤を選択すると特異的に活性化できることから特に注目されているドナー基質(グリコシル化ドナー)である。これまでに主に、チオグリコシドを利用したグリコシル化反応について、幾つかの活性化法を検討した。特にN-グリコシル誘導体の中で、「グリコシルアゾール類」に注目した。これまでに様々のN-結合型グリコシルトリアゾールの合成法が報告されており、それらの大部分はHuisgen [3 + 2]付加環化反応を鍵反応として利用している。しかし、反応終了後にCu触媒が残存することや不安定な一価のCu触媒を用いるため還元剤を加える必要があることなどの制限を有している。そこで超原子価ヨウ素反応剤を活性化剤として用いる新しいN-グリコシルアゾール類の簡便合成法を検討した。その結果、超原子価ヨウ素反応剤を用いたメタルフリーなトリアゾールを用いたN-グリコシル化反応の開発に成功し、新しいN-グリコシルアゾール類の合成法の開発に成功した。種々のグリコシルアゾールが収率良く合成可能であり、またすべての反応においてトリアゾールの1位の窒素原子が選択的に反応し生成物が得られた。
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