研究課題/領域番号 |
17K08231
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
吉田 昌裕 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (10344681)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アレン / 不斉転写 / 軸不斉 / [2+2]環化付加 |
研究実績の概要 |
[2+2]環化付加反応は高度に官能基化されたシクロブタン骨格を一挙に構築する有用な合成法であり、多様な反応例が報告されている。これまで応募者は高度に官能基化された環状化合物を連続反応により一挙に合成する手法の開発を行ってきた。その中で最近アリールプロパルギルエーテルに対して加熱条件下塩基を作用させると、フェノキシアレンへの異性化、続く[2+2]環化付加反応が連続的に進行し、四員環を含む三環性化合物を一挙に与えることを見出した。今回応募者は、光学活性なアリールプロパルギルエーテルに対して反応を試みることで、「中心不斉→軸不斉→中心不斉」と連続的な不斉転写を伴う反応が進行しうるか検討を行った。 不斉異性化反応の検討に先立ち、まずラセミ体の基質を用いてアレンへの異性化が進行するか検討を行った。はじめにアルキン末端にフェニル基を導入したアリールプロパルギルエーテルを合成し、様々な塩基を作用させてアレンへの異性化を試みた。しかしながら複雑な混合物を与えるのみで、目的とするアレンは得られなかった。種々検討を行った結果、末端にtert-ブチル基を導入した基質に対し、塩基としてDBUを作用させると、望む異性化反応が進行し、アレンが定量的に生成することが分かった。更に光学活性なプロパルギルエーテル に対しアミジン塩基を作用させたところ、光学活性な三置換アレンが高い光学純度で生成することを見出した。本結果は不斉転写が高いエナンチオ特異性で進行していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究計画ではプロパルギルエーテルからアレンへの異性化が進行しうる基質を探索後、不斉異性化について検討することが目的であった。不斉異性化反応の検討に先立ち、まずラセミ体の基質を用いてアレンへの異性化が進行するか検討を行ったが、はじめに用いた基質ではアレンへの異性化は進行せず、複雑な混合物を与えるのみで、目的とするアレンは得られなかった。本結果は当初予期しないものであり、研究計画の遅れが危惧されたが、様々な置換基が導入された基質を網羅的に合成し、多様な塩基を用いた条件下に付すことで目的とするアレンが生成する反応条件の精査を行った。結果的に、末端にtert-ブチル基を導入したアリールプロパルギルエーテルに対し、塩基としてDBUを作用させると、望む異性化反応が進行し、アレンが定量的に生成することが分かった。更に光学活性なアリールプロパルギルエーテルの合成を行い、本基質に対し不斉異性化の検討を行った結果、光学活性な三置換アレンが高い光学純度で生成することを見出した。本反応では反応条件の選択により、得られる光学活性アレンの光学純度は96%まで向上することが明らかとなった。現時点では得られた光学活性アレンの絶対配置は未決定であり、不斉転写機構の解明には至ってないが、今後重原子が導入された光学活性アレンの合成、X線結晶構造解析を試みることで絶対配置の決定はできるものと思われる。 以上の研究成果は初年度の研究計画を大幅に上回る進捗状況であり、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果として、光学活性なプロパルギルエーテル に対しアミジン塩基を作用させると、光学活性な三置換アレンが高い光学純度で生成することを見出した。本結果は不斉転写が高いエナンチオ特異性で進行していることを示している。今後の研究の推進方策としては、まず得られた光学活性アレンの絶対配置の決定を試みる。即ち重原子が導入された光学活性アレンの合成、X線結晶構造解析を行うことでアレンの絶対配置を決定する。その後、本結果を基にプロパルギルエーテルからアレンへの不斉転写機構の詳細を明らかにする。更に本反応の一般性を明らかにすべく、様々な反応基質を用いた検討を行った後、得られた不斉異性化の最適条件をもとに、光学活性なアリールプロパルギルエーテルを用いた連続的不斉異性化-[2+2]環化付加反応が進行するか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度は特定の反応基質を中心に反応条件の精査を行ったため、購入した試薬代が予期した金額よりも低く抑えられた。次年度は多様な反応基質の合成を中心に研究を進めるため、物品購入費の増額が必要である。
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