低分子代謝産物分析には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離が広く用いられている。しかしながら、HPLCには分離能の限界があることが理論的に知られており、さらなる高性能化のためには、従来技術を超越する分離媒体の開発が必要とされていた。そこで、ピラー構造を有するオンチップ液体クロマトグラフィー(ピラーアレイカラム)に着目した。ピラーアレイカラムは、チップ上に規則正しいピラー構造を有する分離媒体であり、試料の拡散が最小限に抑えられる。このため、従来HPLCの分離能を超越することが理論的に示されており、従来技術以上の高性能化を可能にすると考えられたからである。これまでに、ピラーアレイカラムの生体分子分離に向けた基盤技術を確立してきた。しかし、多成分生体分子の分離には、ピラーアレイカラムのさらなる高性能化が必須であった。 本年度は、生体分子の定量分析に必須の再現性の向上を目的とし、ピラーアレイカラムへの全自動試料注入システムの構築を行った。オートサンプラー、試料送液ポンプ、移動相ポンプ、六方バルブを用いて、自動試料注入システムを構築した。試料送液ポンプの流量制御とバルブの開閉時間を制御することで再現性の向上を試みた。最適化条件下、クマリン色素2種の保持時間とピーク高さの相対標準偏差が共に約0.3%と良好な再現性を得ることに成功した。今後は、本自動試料注入システムを用いた定量分析への応用が期待される。
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