研究実績の概要 |
低分子生体分子の分離分析において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は広く用いられている。しかしながら、従来HPLCにおける分離能の限界が、複雑な化合物分析を困難にしていた。そのため、さらなる高性能化を達成するためには、従来LC技術を超越する分離媒体の開発が必要とされていた。そこで、本研究において、ピラー構造を有するオンチップ液体クロマトグラフィー(ピラーアレイカラム)に着目した。ピラーアレイカラムは、チップ流路内に規則正しいピラー構造を有する分離媒体であり、試料の拡散が最小限に抑えられる。このため、従来HPLCの分離能を超越することが理論的に示されており、従来技術以上の高性能化を可能にすると考えられたからである。これまでに、ピラーアレイカラムの生体分子分離に向けた基盤技術を確立してきた。しかし、多成分生体分子の分離には、ピラーアレイカラムの周辺技術の開発が必須であった。 本年度においては、令和元年度に開発した改良試料自動注入システムを用いて生体分子分析を行った。移動相送液ポンプ、シリンジポンプ、六方バルブを用いて構築した試料自動注入システムである。蛍光誘導体化アミノ酸5種(Pro, Val, Ile, Leu, Phe)標品の分析を行ったところ、ピーク高さについて、CV値3.0%以下の良好な再現性が得られた。さらに、血漿サンプル中5種アミノ酸の定量に成功した。本結果より、生体分子のピラーアレイカラムを用いた定量を簡便に実施できることが示された。
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