本研究では核内レセプターのリガンド依存的な転写制御において重要と考えられる転写共役因子の選択メカニズムを解明するため、レセプターリガンド結合ドメインとの相互作用分子が選択される様子をNMRを用いて解析してきた。本年度は、PPARγ、PPARγ/RXRαヘテロダイマーのリガンド依存的なコファクター(NCoA1およびNCoR1)由来ペプチドとの親和性変化について解析を進めた結果、以下の点を明らかにした。PPARγのアポ体においては、NCoA1ペプチドとNCoR1ペプチドが共に結合できる状態にあり、それらの動的な平衡状態となっていた。ここにPPARγアゴニストが結合すると、NCoR1ペプチドが解離し、NCoA1ペプチドが優先的にPPARγに結合する。PPARγ/RXRαヘテロダイマーのアポ体では、PPARγ側がNCoA1/NCoR1ペプチドの結合状態の平衡になっている一方で、RXRα側にはNCoR1ペプチドが結合していた。ここにPPARγアゴニストが結合してもPPARγのコファクターペプチドとの親和性にはほとんど影響を与えない一方で、RXRαからNCoR1が解離することが示唆された。一方、RXRαアゴニストは、RXRα側へNCoA1ペプチドを結合させるように作用するが、両アゴニストが共に結合した場合は、NCoA1ペプチドはPPARγへ優先的に結合することが示唆された。これらの結果によりPPARγ/RXRαヘテロダイマーにおいて、リガンド結合がヘテロダイマーパートナー側への転写共役因子結合を制御しうることが明らかとなった。
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