研究課題/領域番号 |
17K08239
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
椛島 力 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (20274673)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / クロマチン / ヒストン / DNA / 修飾酵素 / メチル化 / アセチル化 |
研究実績の概要 |
本研究では、クロマチン修飾に重要な酵素群(ヒストンおよびDNA修飾酵素)の簡便で安価かつ特異性が高い新規測定方法を開発し、本測定法をエピジェネティクス解析へ応用することを目的としている。エピジェネティクスは、DNAの塩基配列の変化(変異)なしにゲノム構造を変化させ、遺伝子発現を調節する制御機構を指す。エピジェネティクスは、胚発生や細胞の分化、老化、X染色体の不活性化など様々な生命現象と関連しており、細菌から動物に至るまで広く存在し、生物にとって重要な制御機構である。さらに、エピジェネティクスは、がんなどの疾患との関連も指摘されており、実際に、関連酵素の阻害剤が臨床適応されている。 現在のクロマチン修飾酵素の測定法は、煩雑、特異性が低い、特殊な試薬や特別な機器が必要などの欠点を有している。そのため、これら酵素群の生体内での詳細な機能解析には、簡便で安価、特異的、高感度な活性測定法が必要であるが、要求を満たすような測定法は開発されていない。そこで本研究では、簡便、安価で特異性の高い、ヒストン脱アセチル化/脱メチル化酵素の活性測定法の開発、DNAメチル化酵素の活性測定法の開発を目的としている。当該年度では、制限酵素とFRETを組み合わせたDNAメチル化酵素の新規活性測定法が開発できた。本法は、これまでの測定法と比べてバックグランドを1/10-1/50に低下させることで、DNAメチル化酵素の高感度測定に成功した。現在、ヒトの正常細胞およびガン細胞を用いて、それぞれの核内のDNAメチル化酵素の活性が測定できるか調査中である。また、ヒストン脱アセチル化/脱メチル化酵素については、基質ペプチドをビーズに固定化されることで、ヒストン脱アセチル化酵素の活性が測定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とするDNAメチル化酵素の活性測定法が開発でき、現在、ガンおよび正常細胞を用いた実験を計画している。これらの細胞間でDNAメチル化酵素の活性に違いが確認できれば、新たな研究用ツールとして利用可能と考えている。 また、ヒストン脱アセチル化/脱メチル化酵素の活性測定法については、当初予定していた蛍光検出だけでなく、比色法による検出の可能性を見出した。比色法は、蛍光法と比較して、感度では劣るが、測定機器として一般的な吸光度計が使用できるため、汎用性は大きいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
DNAメチル化酵素については、各種ガン細胞や組織を用いて、本測定法によって酵素活性が測定できるか調べ、生体試料への応用を試みる。また、他の測定法との感度や特異性などを比較し、本測定法の有用性を調べる。同時に、医薬品として使用されている阻害剤などを用い、本測定法によって阻害効果が認められるか調べることで、医薬品(阻害剤)開発へ利用できるか明らかにする。さらに、特許化または論文として、研究成果を発表する。 ヒストン脱アセチル化/脱メチル化酵素については、引き続き蛍光検出および比色検出、それぞれの測定法の開発を行う。現在、チオール基や還元作用を持つ試薬が、反応を阻害していることがわかったので、これらの試薬を使用しない、反応条件を調査中である。また、必要に応じて、HPLCや質量分析と組み合わせた測定法の開発も検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
基質ペプチドの合成を依頼していたが、合成に2ヶ月ほど時間がかかり、当初予算より少なくなった。したがって、翌年度にペプチド購入費として使用する。
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