研究課題/領域番号 |
17K08241
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
武田 光広 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (90508558)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 認知症 / αシヌクレイン毒性オリゴマー / MRI |
研究実績の概要 |
レヴィ小体型認知症患者の脳内には,αシヌクレイン(α-Syn)タンパク質のオリゴマーが生じる。α-Synオリゴマーは強い神経毒性を持つため、その立体構造の解明は、病態解明や創薬に向けて重要な研究課題となる。これまで、α-Synオリゴマーの立体構造については、CD、NMRによるin vitroでの解析が進められてきた。しかし、α-Syn のin-cell NMR研究では、細胞内に導入したα-Synモノマーが、in vitro に比べよりコンパクトな構造をとる事が報告された(Nature (2016)530,45)。そのため、α-Synオリゴマーも細胞内ではin vitro と構造が異なるると想定される。本課題では13C 標識を施したaSyn をマウス脳に移植・注入し、MRS法によりaSyn由来の13C シグナルを検出することで、in vivo における α-Syn のオリゴマー形成を検出し、その二次構造情報を得ることを目的とする。 今年度は、マウス脳に導入したaSynを実際に検出する事が可能かMRS装置の検出感度の点から可能か調べた。均一13C標識したα-Syn 溶液を大腸菌発現系を用いて発現し、実際の神経細胞内濃度に相当する50μMのファントム(標準試料)を作製した。13C極低温検出器を備えた7テスラMRI装置を用いて、同ファントムの13C MRS測定を行った。その結果、1時間の積算でα-Synに由来する 13Cシグナルを検出出来た。生体内におけるα-Synの半減期は50時間と報告されているので、α-Synが分解を受けずに信号を観測することが可能と考えられる。得られたシグナルの線幅は、溶液NMRにより得られたスペクトルと比較して広幅化していたが、個々のシグナルは分離していた。 本研究成果は、第25回国際磁気共鳴医学総合会議(ISMRM)、第45回日本磁気共鳴医学会大会、第55回生物物理学会において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は、α-Syn ファントム(標準試料)を用いた 13C MRS 検出感度の検討実験を予定していた。当初の計画通り、13C標識を施したaSyn タンパク質溶液を大腸菌発現系を用いて調製し、神経細胞内濃度のファントムを用いて 13C MRS 測定を実施する事が出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
次の段階として、マウス脳に13C標識を施したα-Synを注入して 13C MRSによる検出を試す。当初の計画段階では、aSynを脳内に単に注入するだけでなく、如何にして脳内の神経細胞内に移行させるかを検討課題と挙げていた。しかし、最近のα-Synの脳注入実験の報告に基づくと、外部から注入されたα-Synが、細胞内移行ペプチド等の助けがなくても神経細胞内に取り込まれる事例が報告されている(Nature (2015) 522, 340)。そのため、マウス脳にα-Synを直接注入し、13C MRS測定によりその経時変化を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた安定同位体標識αーSynの調製を次年度に一部もちこしたため、安定同位体の購入を次年度に繰り越す形になった。次年度、同試料の調製時に使用する予定である。
|