研究課題/領域番号 |
17K08242
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
近藤 伸一 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90240944)
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研究分担者 |
笹井 泰志 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60336633)
土井 直樹 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (00781436)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高分子ナノフィルム / リン脂質自己組織化膜 / 架橋反応 / 動的光散乱測定 / 原子間力顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究は、流動性のあるリン脂質自己組織化膜を利用して、親水性面と疎水性面を有する大きさおよび厚みがナノスケールである両親媒性有機高分子ナノフィルムの開発をめざすものであり、本年度においては、有機高分子ナノフィルムの合成およびそのサイズ並びに形状の評価を行った。 シクロデキストリン誘導体に親水性鎖を導入した化合物(CD-1)を新たに合成し、CD-1を流動性のあるリン脂質膜上に固定化後、架橋反応を行った。引き続き、リン脂質膜から高分子ナノフィルムを剥離し、精製することにより高分子ナノフィルムの構築を行った。動的光散乱(DLS)測定により、ナノフィルムのサイズおよび水中での形状評価を行った。その結果、本研究で得られた高分子ナノフィルムは約450nmの大きさであった。また、高分子ナノフィルムの水中での形状を評価するため、角度に対する拡散係数の変化について検討したところ、ほぼ一定の値を示したことより、両親媒性であるという構造の特徴も考慮し球形の形状をしていることが推定された。さらに、本高分子ナノフィルムを水中に1週間保存しても粒子径に変化が認められなかったことより、会合などが起こらず安定であることも示唆された。原子間力顕微鏡(AFM)を用いた形状評価においても、球形の形状であることが示唆された。有機溶媒中での形状についても評価を進めており、メタノール中ではDLS測定からは角度に対して少し拡散係数が変化する傾向にあり、AFM測定からフィルム状の平坦な形状であることも示唆され、各種溶媒中における形状について評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度においては、親水性鎖を導入した新規シクロデキストリン誘導体の合成を終えており、本誘導体を用いた両親媒性高分子ナノフィルムの構築が可能であることも明らかにしており、目的とする要素技術の確立は達成している。 高分子ナノフィルムのサイズおよび形状の評価に関しては、動的光散乱測定および原子間力顕微鏡により評価が可能であることが明らかとなった。さらに、本研究の目的の1つでもある水中での高分子ナノフィルムの安定性向上についても、両親媒性高分子ナノフィルムとすることにより達成できることも明らかとなった。 高分子ナノフィルムのサイズ制御については、反応条件の制御や架橋剤の量の調整などにより検討を行っているが、再現性の点で課題が残っており今後詳細に検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度において検討した高分子ナノフィルムのサイズ制御について引き続き行い、高分子ナノフィルムサイズと架橋剤の濃度との相関性や、反応時間との関係性を明らかにして、合目的な調製条件の確立を目指す。さらに、架橋剤の鎖長による高分子ナノフィルムサイズの制御や形状についても検討を進める。 前年度において高分子ナノフィルムの構築が可能であることを明らかにしたので、平成30年度では高分子ナノフィルム内への薬物の封入について検討を行う。モデル薬物(5-フルオロウラシルなど)を用いて、封入率や封入量などについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度において、英文校正や投稿料などが生じなかったこと、および消耗品として薬物の購入を行わなかったため差額が生じた。 本年度は、論文投稿を行うとともに、薬物封入実験もおこなうため、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究費の使用を行う。
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