研究課題/領域番号 |
17K08249
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金沢 貴憲 日本大学, 薬学部, 講師 (60434015)
|
研究分担者 |
鈴木 豊史 日本大学, 薬学部, 教授 (20267115)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | Nose-to-Brain / 経鼻投与 / 脳デリバリー / バイオ医薬 / 水溶性高分子 / DDS |
研究実績の概要 |
平成29年度は,,Nose-to-Brainによるバイオ医薬の脳内移行性を定量的にマウスで評価することを目的とし,食道側から鼻腔内へ投与する食道逆挿管鼻腔内投与法(鼻腔内投与)を新たに開発した.本方法は,気道と食道にそれぞれカニューレを施し,食道側から鼻腔内へマイクロシリンジポンプを用いて能動的に送液するものである.これにより,従来のピペットによる経鼻投与では回避できなかった投与時の粘膜繊毛クリアランスによる食道や気道側への流出を防ぐことが可能となった.鼻腔内投与を用いて水溶性高分子を投与した結果,ピペットによる経鼻投与と比べて,嗅球,脳,延髄のいずれの部位においても有意に高い分布を示すことを定量的に明らかとした. 次に,モデルバイオ医薬として水溶性高分子デキストラン(MW:3,000,10,000)やアルブミン(MW:66,000)の蛍光標識体の脳内分布を蛍光イメージング装置で観察した結果,嗅球や延髄・橋に強い蛍光が認められたものの,アルブミンの分布は最も低かった.さらに,水溶性高分子イヌリン(MW:5,000)の放射性核種標識体を用いて定量的に脳内分布を評価した.その結果,鼻腔内投与による[14C]-Inulinの脳内移行性は,静脈内や皮下投与に比べ,いずれの部位においても,顕著に高い脳内分布を示し,嗅球,延髄,脳実質の順に高かった.一般に,Nose-to-Brainによる脳内分布は嗅神経が投射する嗅球や三叉神経が投射する延髄で高くなることが報告されていることから,鼻腔内投与された水溶性高分子は,Nose-to-Brain経路を介した脳内移行を示すことが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,Nose-to-Brainによるバイオ医薬の脳内送達を精密に評価するための方法を確立し,数種類の分子量の水溶性高分子の脳内分布動態について明らかとすることができた.よって,本申請研究を順調に進めることができたと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,H29年度に確立したNose-to-Brain動態評価法を用いて,(1)バイオ医薬の“Nose-to-Brain”送達における重要な変動要因を明らかとするため,Nose-to-Brain経路の素過程である,(ⅰ)鼻粘膜,(ⅱ)三叉神経,(ⅲ)脳脊髄液,(ⅳ)脳内,(v)脊髄の動態の定量的解析,(2)明らかとなった変動要因を制御する素子やナノキャリアを選定し,これらを基盤としたNose-to-Brain機構に基づく脳内バイオ医薬デリバリー技術の開発,(3)疾患モデル動物の薬力学的評価による脳内バイオ医薬デリバリー技術の有用性の検証,を進めていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究課題は、2013-2015年度に行った研究(若手B)の研究成果をさらに応用・発展させたものであり、研究内容は継続的なものとなっている。したがって、実験動物の使用や標識試薬類、各種消耗品の使用についても、これまでの研究結果をもとに無駄なく購入、使用することができたため. (使用計画) 次年度の研究を遂行する上で必要となる実験動物や,蛍光および放射性核種標識体・合成高分子・脂質類・ペプチドなどの高額消耗品費、および,これまでの研究成果の発表のための旅費と論文投稿の費用としての使用を予定している.
|