研究課題/領域番号 |
17K08249
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金沢 貴憲 日本大学, 薬学部, 講師 (60434015)
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研究分担者 |
鈴木 豊史 日本大学, 薬学部, 教授 (20267115)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Nose-to-Brain / リポソーム / 経鼻投与 / 脳デリバリー / バイオ医薬 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,Nose-to-Brainデリバリーを促進するナノキャリアを開発することを目的とし、昨年度確立した動態評価法を用いて、(1)様々な表面特性のリポソームの脳内移行効率、(2)新規ナノキャリアの設計と水溶性高分子の脳内移行性の向上効率、についてそれぞれ定量的に評価した。 (1)リポソームは、PEG脂質を含む中性脂質/[3H]-Cholesterolを基本構成とし、そこに、正電荷脂質や負電荷脂質を加えることで、正、負、中性電荷の[3H]-PEGリポソームを調製した。各リポソームを経鼻投与した際の脳および脊髄中の放射活性から各組織中の分布量を算出した。その結果、100 nm程度のリポソームはいずれの表面電荷においても脳・脊髄内への分布が認められ、特にPEGを修飾した中性電荷リポソームが最も高い分布を示した。よって、Nose-to-Brainデリバリーにおいて、100 nm程度のPEG修飾した中性電荷付近のナノキャリアが、脳・脊髄の広範囲に送達できる可能性が示唆された。 (2)新規ナノキャリアとして、粘膜透過性を示す細胞透過性ペプチドTatを修飾したPEG高分子ミセル(Tatミセル)を設計した。Tatミセルの物性は、(1)の検討からNose-to-Brainによる高い脳内移行性が期待される、わずかな正電荷を示す80 nm程度の物性を示した。モデルバイオ医薬として[14C]-デキストラン(分子量10,000、[14C]-DEX)を用いて、Tatミセルによる脳内移行性の向上効率について定量的に検討した。その結果、Tatミセルは、[14C]-DEX単独投与と比較して、投与後早期から脳や脊髄における分布が顕著に向上した。よって、Tatミセルは経鼻投与による水溶性高分子の脳内移行性を向上させることを定量的に明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,昨年度確立した、Nose-to-Brain動態評価法を用いて、Nose-to-Brainデリバリーを向上する新規ナノキャリアを構築することができた。よって,本申請研究を順調に進めることができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,H30年度に構築した新規ナノキャリアを用いたバイオ医薬のNose-to-Brainデリバリー技術による、中枢神経系の希少疾患モデル動物に対する治療効果を評価することで、本技術の有用性の検証と改良を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、2013-2015年度に行った研究(若手B)の研究成果をさらに応用・発展させたものであり、研究内容は継続的なものとなっている。したがって、実 験動物の使用や標識試薬類、各種消耗品の使用についても、これまでの研究結果をもとに無駄なく購入、使用することができたため. (使用計画) 次年度の研究を遂行する上で必要となる疾患モデル動物や,ペプチドなどの高額消耗品費、および,これまでの研究成果の発表のための旅費の費用としての使用を予定している.
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