研究課題
2019年度は多検体一括定量法のうち,誘導体化試薬アナログを用いるそれの開発を中心に研究を進めた.まず,先天性副腎過形成症の診断マーカーである血漿中17α-ヒドロキシプロゲステロン (17OHP) を対象として,4種のGirard試薬を駆使した新規4検体一括定量法を確立した.まず,既存のGirard試薬T及びPにメチル基を追加し,ethyldimethylammoniumや4-methylpyridiniumを荷電部位とする新規Girard試薬を合成した.これら4種の試薬を用いて17OHPを誘導体化し,そのLC/ESI-MS/MS挙動を精査したところ,近接した溶出,同じフラグメンテーションパターンを示し,一括定量に満足し得る結果が得られた.血清4検体をそれぞれ除タンパク及び液-液抽出のみの簡便な前処理を施した後,各試薬で誘導体化し混合後,LC/ESI-MS/MSに付すと,共存物質の影響を受けることなく,17OHPを高い精度・正確度で定量できた.誘導体化を施さずに1検体ずつ定量する従来法と比較すると,前処理後の分析時間が約40%に短縮され,スループットを大幅に向上させることに成功した.次に2018年度に続き,ダンシルクロリド (DNSCl) とそのメチル基をエチル基に置き換えたDENSClを用い,血漿中エストラジオールとエストロンの同時定量法を確立した.この研究では,同時に測定できる検体数が2と物足りない結果に終わった.エストロゲン用の試薬のデザインを練り直す必要性が明らかとなった.さらに,試薬アイソトポログを用いる方法についても,DEAPPZとその2H3-及び2H6-体を駆使し,グルタル酸血症(先天性代謝異常症)のマーカーである尿中ヘキサノイルグリシンの3検体一括定量法を開発した.誘導体化により感度向上及びLC/ESI-MS/MS運転時間の短縮が達成された.
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