研究課題/領域番号 |
17K08253
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
深水 啓朗 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20366628)
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研究分担者 |
大西 優 明治薬科大学, 薬学部, 助手 (60817021)
鈴木 直人 日本大学, 薬学部, 助教 (60756005)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低波数ラマン分光法 / コクリスタル / ナノスポット法 / 超微量分析 |
研究実績の概要 |
2019年度は,本課題において確立された研究基盤をもとに,研究実施計画に基づく検討がほぼ完了し,当初は予定していなかった研究テーマについても展開することができた.3件の雑誌論文および10件の学会発表(うち5件は国際学会)を通じて広く一般社会への公表に努めた.その中でも,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics誌に掲載された「In situ monitoring of the crystalline state of active pharmaceutical ingredients during high-shear wet granulation using a low-frequency Raman probe」では,撹拌造粒中における原薬の結晶転移を複数の代表的なモデルでモニタリングすることに成功した.また,抗てんかん薬で,光安定性に難のあるカルバマゼピンについて,共結晶化による安定性改善を低波数ラマンイメージングで評価する方法を提案した. 本年度に得られた成果を要約すると,低波数ラマン分光法を用いて(1)攪拌造粒の工程中における原薬結晶状態のオンラインモニタリング,ならびに(2)医薬品コクリスタルの微量探索スクリーニングおよびキャラクタリゼーション法に応用することができた.また,年度途中で新型の低波数ラマンプローブ装置を導入することができたので,これまでに測定してきた試料系列について,さらなる高感度かつハイスループットな測定が期待できることから,プローブを含む装置全体のパフォーマンスについて検証を開始した.さらに,低波数ラマンスペクトルの帰属についても継続的に取り組んでおり,これまで検討を進めていたアセトアミノフェン以外の試料でも単結晶を調製し,測定面とピーク波数との関連性について考察を深めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は当該研究計画の最終年である3年目であり,基盤技術の確立が計画より早く進んだことから,実施例を国内外の学会発表ならびに投稿論文として公表することに努めている.また,米国Coherent社の協力により,新型の低波数ラマンプローブ装置を導入することができた.また,新たに米国のMarqMetriX社とも協力関係を構築することができ,新型のコンパクトかつ高性能なラマン分光システムに,上述したプローブ装置を換装することにより,測定のパフォーマンスが格段に向上した.この新しい分光系により,単純に,測定時間を短縮できるだけでなく,より高品質のS/N比に優れたスペクトルが得られるようになったことから,結果的に結晶多形の識別能も相乗的に向上が認められた. 他機関との共同開発・研究体制も継続しており,国内では国立医薬品食品衛生研究所や堀場製作所との意見交換や情報共有を進めている.国外では上述した米国の光学機器メーカー2社,ミネソタ大学薬学部およびミシガン大学薬学部との情報共有・意見交換を行っている.また,タイ国チュラーロンコーン大学薬学部と開始した新規コクリスタルの探索スクリーニングについても進展が認められたため,新たに抗マラリア薬とクルクミンの誘導体について検討を開始している. 以上のことより,当初の計画より順調に進んだので,補助事業期間の延長承認申請を行い,1年間の延長が認められたことから,更に応用例を拡大する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当研究室には大学院生として後期課程が5名,前期課程が7名在席しており,本研究課題に直接関わる学生も4名をアサインし,精力的に活動を続けてきた.しかしながら,新型コロナ感染症拡大の影響で,年度末の3月に予定していたタイ国での国際学会は中止となり,薬学会は発表要旨のみの誌上開催という形になった.この後にも連続して学会発表を準備していたが,いずれも中止あるいは延期の措置を余儀なくされており,学会発表としては結果の公表が困難な状況となった.その他にも大学施設における研究活動自体が厳しく制限されているが,新たにWeb会議システム等を導入し,研究室内,大学内外とのコミュニケーションおよびディスカッションの手段を確保し,これまでに得られている結果をまとめるとともに,投稿論文の作成に繋げられるように工夫を重ねている.また,社会の状況が落ち着いてきた際,速やかに研究活動を復旧できるように準備を進めている.Web会議システムの導入は,むしろ困難な現状によって推進されたとも言えるので,今後も継続的に活用して効率化に努めるとともに,距離的に制限されていた国内外との交流を促進する機会として活用する. 具体的な活動内容としては,現在,技術導出・指導が進んでいる医薬品の低分子化合物だけでなく,新たなモダリティと期待される中分子やペプチド化合物について,あるいは医薬品に限らず,食品や化粧品などの分野にも応用範囲を広げることに努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に対して研究が順調に進行したため
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